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草笛光子さんに聞く 役に入り込む喜び 新しい挑戦は続く

K-Person | 神奈川新聞 | 2021年10月31日(日) 11:00

草笛光子さん

 日本のミュージカル界のパイオニアとして今も舞台に立ち、映像作品では姥捨山の老婆から小説家まであらゆる役柄を説得力を持って演じ分ける。今春放映されたフジテレビのドラマ「その女、ジルバ」ではバーのママとして華やかなドレスを着こなし、成熟した女性の美しさを体現したことは記憶に新しい。

 30日に公開された映画「老後の資金がありません!」で演じたのは、天海祐希さん演じる主人公の義理の母親・後藤芳乃。夫に先立たれ、息子夫婦との同居を始めるが、浪費家かつ天真らんまんな性格で周囲を翻弄(ほんろう)する役だ。観客の度肝を抜くような変装も披露している。「前田哲監督には『そのままで面白いから、草笛さんは自然体で出て下さい』と言われて、ひどいわと思ったけれど思い切ってお引き受けしました」と楽しそうに笑う。

 浅草の老舗和菓子屋の女将だった芳乃。「着物を着ていた人が洋服を着るとしたら?」と衣装にはこだわったという。その役作りは、真っ赤なコートに私物の黒い帽子を合わせた登場シーンに結実。一目で芳乃の性格が伝わる場面となった。「人物の歴史は服装にも表れる。『犬神家の一族』に出演した時は、市川崑監督と一緒に、浅草の反物屋で着物を選びましたよ」と懐かしそうに振り返った。

逼迫(ひっぱく)する家計に悩む主婦の姿を描いたコメディー映画「老後の資金がありません」はT・ジョイ横浜などで上映中

 映画のクライマックスは、芳乃が自ら企画した生前葬の場面。越路吹雪さんのヒット曲「ラストダンスは私に」を天海さんと一緒に披露した。大好きな越路さんの曲を歌うことには複雑な気持ちもあったというが、松竹歌劇団で活躍した自身と、宝塚歌劇団のトップスターだった天海さんの歌声は幸福感にあふれ、観客の心を熱くするシーンとなった。

 「仕事も恋愛も、何でも相談していた」という越路さんは1980年、56歳の若さで亡くなった。それ以来、芝居の前にはいつも舞台袖で「コーちゃん、行くわよ」と声をかけてからライトの中に出ていくのだという。「彼女とお別れする時、これから私が舞台に出る時はいつも一緒に出ましょうね、と約束したの」

 来年度のNHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」では源頼朝を支える乳母・比企尼(ひきのあま)を演じることが発表されており、今後も新しいステージへの挑戦は続く。「今、とある役柄をもらっているんだけど、すごく難しいの。私は結構チャレンジャーだから、面白い企画だとつい『はい』って言っちゃうのよ」と語る表情は、演じることの喜びに満ちていた。

くさぶえ・みつこ
 女優。1933年横浜市生まれ。県立横浜第一高等女学校(現・横浜平沼高校)卒業。50年松竹歌劇団(SKD)入団、53年に映画「純潔革命」でデビュー。「社長シリーズ」など東宝喜劇に多数出演。ミュージカルでは「ラ・マンチャの男」「シカゴ」の日本初演に出演。99年紫綬褒章、2005年旭日小綬章、13年神奈川文化賞受賞。著書に「いつも私で生きていく」「草笛光子のクローゼット」がある。

記者の一言
 上品なニットに黒のタイトスカート、ハイヒールを身につけ、背筋を伸ばした優美な姿に思わずため息がもれた。88歳とは思えないほどつやのある肌やグレーヘアに憧れる女性は多い。「ユニクロの服もすてきに着こなせる女性でいたい」との一言に、「俳優」ではなく「女優」という表記にこだわる理由がわかった気がした。  学生時代から通っていたという元町商店街は、食事や買い物をした思い出がいっぱい。「元町は私のシマなの」といたずらっぽく話す様子はとてもチャーミングだった。

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