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桂宮治さんに聞く 「令和の爆笑王」理想の独演会とは

K-Person | 神奈川新聞 | 2021年9月19日(日) 14:00

 パワフルで大きなしぐさと、底抜けに明るい語り口は一度見たら忘れられない。子どもから大人まで、見る者をぐいぐいと笑いの渦に引きずり込んでいく芸風で勢いに乗る、人気落語家の1人だ。独演会でのフリートークでは時に観客をあおり、ちょっとした毒舌が混じることも。「自分の芸は正統派の落語ではないかもしれない。でも、その日来てくれたお客さん全員に満足してもらいたいから、そのためには手段を選びません」。高座にかける思いはまっすぐで、熱い。

 二つ目時代に横浜にぎわい座の小ホール(のげシャーレ)でスタートした独演会「よこはま宮治展」は観客の強い支持を受け、真打ち昇進を待たずに芸能ホールに「昇格」した人気企画だ。「横浜にぎわい座だけでなく、県内ではたくさんの落語会にお招きいただいていますが、神奈川のお客さんは感受性が高くて落語を積極的に楽しんでくれる。お客さんのリアクションが豊かだと話の世界もふくらむんです」とうれしそうに語る。

「よこはま宮治展」横浜にぎわい座、12月10日午後7時開演。全席指定3200円(11月1日発売開始)。問い合わせは横浜にぎわい座、電話045(231)2515。

 「令和の爆笑王」との呼び声も高いが「笑いも涙もある、ジェットコースターのような独演会」が理想だという。「もちろん滑稽噺(ばなし)ではおなかをかかえて笑い転げてもらいたいですが、独演会では、震えるほど怖い怪談噺や涙がこぼれるような人情噺も合わせて楽しんでほしい。振れ幅の大きさを意識しています」

 化粧品を実演販売する仕事で活躍していたが、2008年に桂伸治に入門。21年2月には真打ちに昇進した。落語芸術協会の落語家としては29年ぶり、5人抜きでの抜てきは話題を呼び、同月から都内で始まった真打ち昇進披露興行は連日満員となった。「特殊な形での昇進にはなりましたが、大事なのは毎日、目の前のお客さんに楽しんでもらうこと。抜てきすべきではなかったと言われないように努力しなければ、という責任も感じています」とひきしまった表情を見せる。

 「本当に運が良かった」と振り返るのは、いつも優しく見守ってくれる師匠に出会えたこと。コロナ禍の今も仕事の依頼は途切れず、観客の前で落語を演じられることのありがたさを改めてかみしめているという。「今の自分があるのは師匠と仲間、支えてくれるお客さんのおかげ。人に恵まれたと思っています」

 周りの人に愛され、肩の力を抜いて楽しそうに仕事をする師匠の姿に憧れるというが「今はまだがむしゃらに励む時期。落語家は死ぬまでが勝負なんです」。

かつら・みやじ
 落語家。1976年東京都生まれ。2008年桂伸治に弟子入り。12年二つ目に昇進し、同年NHK新人演芸大賞を受賞。14年度国立演芸場「花形演芸大賞」銀賞受賞。六代目神田伯山や柳亭小痴楽ら落語芸術協会の若手11人で結成したユニット「成金」メンバーとしても活躍した。21年2月真打ち昇進。学校落語にも積極的に取り組み、落語の普及に努めている。

記者の一言
 「目の前の人を楽しませたい」というサービス精神はセールスマン時代に培われたものだろうか。回答にも必ずオチをつけてくださり、笑いの絶えない取材となった。都内で40日間続いた披露興行には笑福亭鶴瓶師匠、立川談春師匠ら豪華なゲストが連日登場したことも話題を呼んだ。「皆さん全力でぶつかってくるので大変でした」と笑うが「強力な先輩方のあとでトリをつとめたことで、自分の中の何かが変わったと思います」と振り返る。横浜にぎわい座での独演会も末永く続けてもらいたい。

 
 
 
 

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