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村上雅郁さんに聞く 子どもに胸張れる大人でいたい

K-Person | 神奈川新聞 | 2021年8月8日(日) 14:00

 誰にも言えない気持ちを抱えてとぼとぼ歩く通学路、学校の屋上で友達と交わした秘密の約束─。多くの人の中に眠っている風景や心情を鮮やかに描き出し、子どもだけでなく大人の読者からも熱い支持を集める児童文学作家だ。登場人物に向けるまなざしには常に温かさが感じられ、物語にどこまでも誠実に向き合っていく作家としての姿勢が伝わる。

 2019年「あの子の秘密」でデビュー。これまでの作品はいずれも、育った大船が舞台であることから、同エリア周辺の書店で、著作に関する共同パネル展が開催されている。「確信を持って物語を書いてはいるのですが、書店員さんや読者から感想が返ってくるとほっとする。共感してくれる人がいるのは勇気づけられますね」と感謝を込めて語る。

「りぼんちゃん」(フレーベル館/1540円)

 7月に発売されたばかりの最新作「りぼんちゃん」は、小学6年生の朱理(あかり)が主人公。親友の理緒が家庭内の「オオカミ」に傷つけられていることを知り、彼女を暗闇から救い出そうと闘う物語だ。特殊能力がある訳でもなく、家でも学校でも「幼稚な子」扱いされている朱理だが、実は「これまでの作品の中で一番強力なキャラクター」。「無力さを思い知らされながらも、大切な友達のために戦い続ける強さを持った主人公です」

 これまでの作品でも、親子間のいびつな力関係の中で失望する子どもたちの姿を描いてきた。今回は子どもの虐待防止センターに取材を行い、多くを学んだという。「子どもたちを救おうとしている人々に勇気づけられたし、未来は信じられるよ、と実感を持って書けました」

 「児童文学作家は、未来を生きる子どもたちに何を語るか責任を負っている」というあさのあつこさんのメッセージをいつも心に留めているという。「子どもたちに対して胸を張れる大人でいられているか、常に自分に問い掛けています」

 幼い頃から物語を作ることが好きだったが、本格的に創作を始めたのは20歳直前。「10代後半は精神的に不安定な時もあったのですが、物語を生み出すことで、苦しみが昇華されていくのを感じた。アイデアが出てくるまでは大変ですが、物語を紡ぐのは楽しいです」と笑う。

 今後は小学校低・中学年の子どもたちに向けた、読書の扉を開くようなファンタジー作品にも挑戦したいという。「本は読めなくても困らないけど、読めた方が楽しい。人生において楽しいものは多い方がいいと思うんです」

むらかみ・まさふみ
 児童文学作家。1991年東京都生まれ、鎌倉市で育つ。第2回フレーベル館ものがたり新人賞大賞受賞作「あの子の秘密」でデビュー。2020年、同作で第49回児童文芸新人賞を受賞。同年「キャンドル」を発表。

記者の一言
 子ども時代に読んだ本は? と聞くと「なん者ひなた丸、かいぞくポケット、こそあどの森、ハリー・ポッター、はてしない物語、デルトラ・クエスト…」と多くの本を挙げてくれた。読み聞かせをしてくれたご両親や、朝読書の時間をつくってくれた先生方との出会いも村上さんを作家へと導いたのだろう。自分の読書体験を振り返ると、小学2年生で出会った寺村輝夫さんの「ぼくは王さま」シリーズで読書の沼にはまった思い出がある。村上さんの作品もまた、多くの子どもたちに読書の喜びを届けていくはずだ。

 
 
 
 

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