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藤原季節さんに聞く 映画という「まやかし」に救われる

K-Person | 神奈川新聞 | 2021年5月30日(日) 12:00

藤原季節さん

 寡黙な役でも、黒目がちな瞳や全身にまとった空気が、その人物像を雄弁に物語る。「やっと皆さんに知ってもらえるようになった」と謙遜するが、強い存在感で注目を集める若手俳優の1人だ。

 29日から公開されている映画「のさりの島」では、オレオレ詐欺をしながら熊本県天草市に流れ着いた男を演じる。寂れた商店街で楽器店を営む「ばあちゃん」は男を孫の「将太」として受け入れ、2人の奇妙な共同生活がスタートする。

 「男」には役名がないが「今は名前がないことがしっくりくる若者も多いと思う」と分析する。「僕らの年代は『みんなが特別なのだから好きなことをしなさい』と言われて育ったけれど、大人になり、自分が代替可能な存在であることに傷ついた人間も多い。名無しの青年がさまよう物語には現代性を感じました」

「のさりの島」はユーロスペース(東京)で上映中。7月10日から横浜シネマ・ジャック&ベティで上映予定。

 「のさり」とは天草地方に伝わる古い言葉で「いいこともそうでないことも、天からの授かり物として受け入れる」という意味だ。山本起也監督はその場で撮影した映像を逐一確認することもなかったといい、「カメラマンを信用し、映像すらも『授かり物』と考えている山本さん自身が、のさりを体現していましたね」と笑う。同作品は、ばあちゃん(山西艶子)を演じた原知佐子さんの遺作となったが、「りんとした姿が、強く美しい人です。まだ過去形で語りたくない」と宝物のような撮影期間を振り返った。

 劇中の登場人物が語る「まやかしが、人間には必要な時がある」というせりふが気に入っているという。「目に見えない神仏や物語は、多くの人間の支えになってきた。僕自身もずっと映画に救われてきたし、今も救われています」

 高校卒業後に上京し、俳優の道を突き進んできた。「仕事が少ない時期から励まし続けてくれた」という村上虹郎さんと共演した映画「佐々木、イン、マイマイン」では、自身と同じように俳優を志してもがく主人公を熱演。宮沢氷魚さんと同性カップルを演じた「his」も評価され、第42回ヨコハマ映画祭の最優秀新人賞を受賞した。「力を尽くし、作品に取り組んだ時間は自信になりました」

 テレビドラマや舞台でも活躍するが「毎晩映画を見る時間のために頑張っている」と言い切るほど映画愛は強い。「理不尽な悪や悲劇に打ちのめされても、懸命に生きる人たちを描いた作品が好き。そこで生きている人の思いや悲しみを体現できる俳優になりたいですね」

ふじわら・きせつ
 俳優。1993年北海道生まれ。第42回ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞。映画「くれなずめ」「明日の食卓」が公開中。フジテレビドラマ「監察医 朝顔」などドラマ出演も多数。NHK大河ドラマ「青天を衝(つ)け」では藤田小四郎を演じている。6月25~27日にはKAAT神奈川芸術劇場で舞台「サンソン―ルイ16世の首を刎(は)ねた男―」に出演する。

記者の一言
 横浜が好きで、KAAT神奈川芸術劇場で舞台を鑑賞し中華街に行くのが鉄板コース。「横浜が舞台のドラマ『たったひとつの恋』にもハマりました」と笑顔で語る。

 ヨコハマ映画祭最優秀新人賞受賞は「役者として名誉なこと」。「『ハマの空気が吸いたくて』と言うために俳優はみんな頑張っているんですよ」と故・高倉健さんの名言を引用して喜びを語る顔にこちらもうれしくなる。制作陣や俳優仲間に愛され、多くの作品で活躍する理由が分かる気がした。お薦めの焼酎「天草」、飲んでみます!

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