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鈴木優人さんに聞く 深く知るほど面白い オペラの魅力

K-Person | 神奈川新聞 | 2020年10月11日(日) 11:24

 指揮者、演奏家、作曲家、音楽祭のプロデューサーなどさまざまな顔を持つ、クラシック音楽界のトップランナー。音楽に関する幅広い知見を持つ「才人」としてメディアに登場することも多いが、全身全霊で音楽に取り組む様子はまさに「音楽家」だ。

 今月は県内で開催される、2つのオペラに登場する。18日、よこすか芸術劇場(横須賀市)で上演される「幻(GEN)」は、能「隅田川」と、同作に影響を受けて作られたオペラ「カーリュー・リバー」を連続上演する企画。鈴木さんは「カーリュー・リバー」でオルガンを弾きながら音楽全体の進行をつかさどる。「場面ごとにリードする楽器が変わるのですが、演奏者が相互に呼吸を合わせて進行するのは室内楽的な要素もあり、とても面白いところ。僕はおおむね楽譜通りに進んでいるかを把握しながら自分のパートを演奏するので、結構大変なんです」と楽譜を見ながら語るが、表情はとても楽しそうだ。

31日午後3時開演、全席指定S席9500円など。チケットはチケットかながわ、電話(0570)015415

 31日に県立音楽堂(横浜市中区)で上演されるヘンデルの名作オペラ「リナルド」も注目の公演。鈴木さんが首席指揮者を務める古楽オーケストラ「バッハ・コレギウム・ジャパン」のオペラシリーズ第2弾で、カウンターテナーの藤木大地さんやソプラノの森麻季さんなど実力派の歌手が出演する。十字軍の時代、恋人たちが魔法使いに翻弄(ほんろう)されるファンタジックな物語だ。「『バロックオペラ』は長くてオペラファンも手を出しにくい、と誤解されている部分がありますが、それを払拭(ふっしょく)したい」と力を込める。「この時代のオペラにはレチタティーボ(朗読調の歌唱)など自由度の高い部分があり、それが退屈になる要因でもあるし、演奏者の腕の見せどころでもある。今回は斬新な演出も加えて、上質なエンターテインメント作品として楽しんでもらえるはずです」と自信を見せる。

 オランダを拠点に、世界中で演奏を披露する日常がコロナ禍で一変したが「ユーチューブやインスタグラムでのライブに挑戦し、オンライン音楽配信について新たな知見を得られました」と目を輝かせる。とはいえ、観客と共に生の音楽を分かち合う体験は代えがたい喜びだ。「今後はオンラインと生演奏のバランスが課題になっていくと思う。いずれにせよこのコロナ禍は、僕たちは音楽なしでは生きられない、と改めて確信する機会にもなったのではないでしょうか」

すずき・まさと
 音楽家。1981年オランダ生まれ。東京芸術大学大学院修了。オランダ・ハーグ王立音楽院修了。バッハ・コレギウム・ジャパン首席指揮者、読売日本交響楽団指揮者/クリエイティブ・パートナー、アンサンブル・ジェネシス音楽監督、調布国際音楽祭エグゼクティブプロデューサーを務めるほか、ピアノやチェンバロ、オルガンなどの鍵盤奏者としても活躍中。

記者の一言
 奥さまが筋金入りの「浜っ子」で、結婚式では「ブルーライトヨコハマ」をファンファーレバージョンで演奏。「僕も横浜が大好きになり、市歌も歌えるようになりました」と愉快そうに語る鈴木さん。細胞レベルから音楽が好きなのだろう。同時にクラシック音楽市場を客観的に分析する表情も持ち合わせ、その姿はまるで企業の優秀なプレーイングマネジャーのようだった。「この人が関わるプロジェクトなら、きっと面白いはず」とわくわくさせられる熱が、多くの観客にも伝わっているのだと思う。

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