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【K-person】宇佐見りんさん
うそは書かない 本気で言葉をつづりたい

K-Person | 神奈川新聞 | 2021年3月21日(日) 15:00

宇佐見りんさん

宇佐見りんさん

 男性アイドルを応援する活動を支えに生きる少女の内面に迫った「推し、燃ゆ」(河出書房新社、1540円)で、第164回芥川賞を受賞した。21歳での受賞は、2004年の綿矢りささん、金原ひとみさんに次ぐ3番目の若さ。「すごく憧れていた賞。うれしいと同時に焦りのような気持ちもある」と率直な感想を語る。

 受賞のことばに「書き言葉に誠実でありたい」と記した。「小説では本気で言葉をつづりたい。一番はうそを書かないこと。言葉を支配する気でいると、いつか言葉に復讐(ふくしゅう)される」。逆に誠実であれば、重要な場面で味方してくれるという。

 例えば「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」で始まる「推し、燃ゆ」の冒頭。「何度も書き直したが、最終的に流れるようなものができた瞬間に『これだな』と思った。言葉にきちんと向き合っていくと、知らない世界を自分に見せてくれたり、『これでよかったんだ』と思わせてくれたりする瞬間があるんです」

「推し、燃ゆ」(河出書房新社、1540円)

 スマートフォンのメモ機能を使って、夢の記憶や映画の感想、他人が感じていそうなことなど、さまざまな記録を取る。最近は高校時代の教室の様子などを創作ノートに残している。「1作ごとにこれが書けるようになったなという実感はあるけれど、逆に時間とともに忘れて、書けなくなるものも出てくるかもしれない」。日々の記録も、いつか書き言葉を誠実に紡ぐための準備だ。

 2歳から県内に暮らし、現在も自宅から都内の大学に通う。初めて小説を書いたのは小学3年の授業だった。高校時代に本格的な小説を書き始め、デビュー作「かか」で三島由紀夫賞を最年少受賞するなど、順調なスタートを切った。

 ちなみに自身にも8年来の「推し」の俳優がいて、昨年は同じ公演に5回通ったほど。だが受賞作の主人公あかりの生活の「背骨」が「推しを推すこと」であるのに対して、「私にとっては小説を書くことが『背骨』」と言い切る。

 今後の活躍が期待される中、現在は3作目の執筆に取り掛かっている。

 「いつか『書き切った』と思えるものを書きたい。まだたどり着けていませんが、少しずつ探っているところです」

うさみ・りん
 作家。1999年静岡県生まれ、神奈川県育ち。現在大学生。2019年、「かか」で第56回文藝賞を受賞しデビュー。20年、同作で第33回三島由紀夫賞を受賞。21年、第2作「推し、燃ゆ」で第164回芥川龍之介賞を受賞、本屋大賞ノミネート。

記者の一言
 高校生の頃から神奈川近代文学館(横浜市中区)に通っているという。「100年目に出会う夏目漱石」展(2016年)や「生誕140年 与謝野晶子展」(18年)などが印象に残っているそうだ。同館近くの「港の見える丘公園」のベンチで、展覧会の感想や思いついたことをメモに書き留めることも。そのうち「この描写は港の見える丘で書いたのかな?」という場面が作品に出てきてくれることを期待したい。

 県内の小学校に通っていた5年生の時、教室で担任の先生と自作物語の手直しをしていた最中に東日本大震災に見舞われた。その経験をつづったエッセーを2月4日付文化面に掲載したところ、新聞を読んだ先生から連絡があったという。地元紙としてもうれしいお知らせだった。

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