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【K-person】佐藤多佳子さん
スタジアムは非日常、新たなエネルギーを

K-Person | 神奈川新聞 | 2020年11月8日(日) 11:20

佐藤多佳子さん

佐藤多佳子さん

 累計200万部を達成した陸上競技の青春小説「一瞬の風になれ」から13年。実はプロ野球横浜DeNAベイスターズの40年来のファンだという作家が、満を持して野球小説「いつの空にも星が出ていた」(講談社)を出版した。横浜大洋ホエールズ時代から、1998年の日本一、2017年の日本シリーズ進出と、4つの短編はいずれも、ベイスターズを愛してやまない人々の物語だ。

 実家が以前、明治神宮野球場(東京都)の近くだったが、心を奪われたのは神宮をホームとするヤクルトスワローズではなく、ホエールズだった。「強いチームではなかったけど、監督も選手もすごく個性があって面白かった」。特に1980年代にエースとして活躍した遠藤一彦投手のファンで、巻頭収録の「レフトスタンド」は「神宮のレフトスタンドで一人で大洋を応援している女子大生だった」という自らの記憶がベースだ。

「いつの空にも星が出ていた」(講談社、1760円)

 取材の綿密さには定評がある。38年ぶりに優勝を飾った98年は「特別な時代。多くの人がとても大切にしている思い出なので、うかつにフィクションで触ってしまうのが怖かった」。自身は子育てが忙しく球場にあまり足を運べなかった時期だったため、横浜がどのように盛り上がり、歓喜の瞬間を迎えたのかを正確に知りたいと、当時を知る横浜市職員らに取材を重ねるうち、優勝パレードに携わった職員を主人公に優勝の年を振り返る短編「パレード」が出来上がった。

 野球は多様性のあるスポーツだという。団体競技であり連係やチームワークの魅力を存分に持ちながらも、投球、打撃、捕球などの局面では個人のプレーがクローズアップされる。守備のポジションもそれぞれ特徴的だ。「スポーツ小説を構想する時、投手と打者の一対一の対戦に集中して描写しつつ、チームとしてのケミストリー(化学反応)も交えられる」と次々にその魅力を数え上げる。

 今年はコロナ禍で横浜スタジアムに通えなかったが、通常は年15回程度足を運ぶ。スタジアムは来場者のそれぞれに人生があり、それぞれの思いで応援していることを実感する場所だという。自身も就職について悩んだ20代の頃、「この試合でホエールズが勝ったら決心しよう」と思いながら観戦した試合があった。「スタジアムは非日常。別世界にいざなわれてリフレッシュすることで新たなエネルギーを得て、それぞれの人生に向き合える。読者が野球場に行きたいと思ってくれたらうれしいですね」

さとう・たかこ
 作家。1962年東京都生まれ。89年「サマータイム」で月刊MOE童話大賞を受賞しデビュー。2007年に神奈川の高校陸上部を舞台にした「一瞬の風になれ」で本屋大賞と吉川英治文学新人賞、11年「聖夜」で小学館児童出版文化賞、17年「明るい夜に出かけて」で山本周五郎賞を受賞。著書に「黄色い目の魚」「夏から夏へ」「シロガラス」シリーズなど。

記者の一言
 「ユニホームは着ていった方がよいでしょうか」。撮影前に佐藤さんから提案があり、ぜひ! とお願いした。当日着て下さったのは大変タイムリーな方のユニホーム。掲載写真では残念ながら背番号が見えないが、答えは「18」、「ハマの番長」こと三浦大輔2軍監督のもので、何と直筆サイン入りだった。「監督になったら、すっごく楽しみ」と声を弾ませる佐藤さんは「昔から勝敗は気にならない」と温かい。日々の戦いぶりに一喜一憂している記者はベイファンとしては未熟だと反省した。

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