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【1964東京五輪】〜アーカイブズで振り返る神奈川〜
村長日記(31) 0時過ぎても選手帰らず

連載 | 神奈川新聞 | 2020年10月18日(日) 09:00

 1964年の東京五輪。神奈川には相模湖のカヌー選手村と大磯のヨット選手村が設けられた。神奈川新聞では両村長が日々の出来事をつづった「村長日記」が連載された。五輪イヤーの今年、当時の日付に合わせてこの連載を再び掲載します。海外旅行が一般的でなかった時代、世界各国の五輪選手を迎える緊張や戸惑い、喜びなど臨場感あふれる描写から、1964年と違うもの、変わらないものが見えてきます。

 現代の観点では不適切な表現もありますが、1964年当時の表現、表記をそのまま掲載しています。(※)で適宜編注を入れました。

カヌー協会の補助員が相模湖漕艇場の艇庫前で野点(のだて)を開き、練習にはげむ選手らを慰問した。お茶を飲んだ途端、大声を上げ渋い顔をする外国人選手も。写真は、作法通りにお辞儀をするスウェーデンのリュングダール選手=1964年10月16日、相模湖町(現在の相模原市緑区)与瀬

村長同士で苦労ばなし

相模湖選手村村長・松原五一

 秋晴れの空を仰いで朝の恒例行事国旗掲揚がはじまる。きょうから逗子地区第二班の奉仕であるが、けさ早くからじっと見ていたチェコスロバキアのバチエック監督が、作業が終わると見るや、つかつかと少年たちのかたわらに歩み寄って、用意してきたペナントとバッジを一人一人に手渡し、少年たちの奉仕をたたえてくれたが、きっと毎朝毎夕、奉仕する少年たちの姿が彼らの胸にふれるものがあったのであろう。

 たまたまきょうの当番に当たっていた逗子地区の少年たちがこれを受けたが、この奉仕に参加する全団員に対しても同様の関心と謝意とをもっていることと信じている。

 きのうから事務所に山ユリのはち植えがおかれて、ふくいくたるかおりがつよく鼻をつく。山ユリが県花であることはいうまでもないが、神奈川県民を代表して各国選手のお世話をせよといわれているようで重荷を覚えた。

 山ユリといえば、同じように見事なキクの大輪が村のここかしこに飾られ一段と風趣をそえているが、これは大船の県立フラワーセンターのご好意によるもの。すでに造っていただいて、村内に美しい色どりを添えている花壇といい、今回のはち植えといい、こうした暖かい支援の手がどれだけ各国選手の心をやわらげ、家庭的ふんいきをかもし出しているかわからない。心からお礼を申しあげるしだいです。

 きょうは来訪者の多い日だった。まず大磯村の馬飼野村長と山口省氏がみえ、いろいろとお互いの苦労ばなしをし合った。村の内部的事情に差異はあるが、同じような使命のために奉仕している者同士なので、互いにはげまし、互いになぐさめ合って残余の期間をがんばろうと誓ったものだ。

 つぎには代々木女子村の貞閑(※貞閑晴(さだか・はる)氏)村長とOOC(※オリンピック大会組織委員会)の吉田施設部長がみえた。私は用務のため上京することになっていたので、あいさつをかわしただけで失礼して車中の人となった。ちょうど上京の用務をもっていた日本選手団の白取(※白取義輝氏)、細谷(※細谷悦哉氏)両コーチとルーマニアのナバサルト氏と同乗することとなった。

 快晴の甲州街道をひた走りに東京へ。大垂水の峠路からながめる相武の山々は手にとるようにくっきり浮かび、遠く近く散在する軒並みや黄金色づく田畑の色調が一幅のパノラマにみえて、同行のナバサルト氏は「ワンダフル」の連発であった。

 氏はすでに日本選手団の技術指導のため来日されたこともあり、この面ではルーマニアにおける最高の権威で、優秀な名コーチとか。

 車中のいろいろの話のなかからとくに強く感じられたことは「日本の選手はことば(文句といった方がよいと思うが)が多すぎる。コーチしても“あれはこうだ”とか、“このところはこうしたらよい”といって、コーチに対して反論することが多い。われわれの国ではコーチには絶対服従。そのかわりコーチと意見があわなければ、どんどん変えてしまう。文句の多い日本選手はあまり進歩がない」ということであった。教えられるところが大きいと思った。

 夜、村では“着物ショー”が横浜の野沢屋百貨店(※その後の横浜松坂屋)のご好意で開かれ、なかなかの人気が集まった。


美談はわが村の名誉

大磯選手村村長・馬飼野正治

 きょうから三日間競技は休み、江ノ島(※ヨット競技会場)行きの定期バスに乗るものはきわめてまばらである。とくに南欧の人たちは、バカンスともなれば徹底的に遊ぶ習性があるので、朝早くから近くは箱根、遠くは京都、大阪方面まで出かけたらしい。

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