
関内地区を主とする中心市街地のまちづくりを考える場として、2001年に発足した「横濱まちづくり倶楽部」が、新しい一歩を踏み出した。16年4月に一般社団法人化。20年に予定されている横浜市庁舎の移転に伴う関内・関外地区の変化に、より深く働き掛けようとしている。
同倶楽部は、1998年に開催された「第2回ヨコハマ都市デザインフォーラム」の参加者を中心に立ち上げられた。横浜の魅力を発信し、都市の価値を上げることが活動の目的で、建築関係者や大学教授ら43人5団体が会員に名を連ねる。
これまでは、まちづくりへの提言に加え、横浜を知るための「横濱通養成講座」、象の鼻パークや大さん橋(ともに横浜市中区)を使ったイベントなどを企画してきた。街に活気をもたらす提案をまとめたカード型書籍も出版している。
同倶楽部理事長の近澤弘明さん(近沢レース店代表)は、法人化した目的を「市庁舎移転などの事業に参画するには、任意団体では難しいため」と話す。

市庁舎は、20年にみなとみらい線馬車道駅に近い北仲通地区に移転する予定だ。職員ら6千人近い人も動き、市が借りていたJR関内駅周辺のビルも空く。
市は、現庁舎の行政棟は建物の活用を基本に、国際的な産学連携拠点、観光・集客の拠点を形成する方向だ。ほかに同駅に近い教育文化センター跡地や、横浜文化体育館の再整備も控える。「行政の組織は人員が入れ替わる。ただ、まちづくりは10年、20年という期間で行うもの。民間、行政、企業が三位一体にならなければ、あるべき中心市街地の姿にならない」と近澤さんは言う。
「PeRRY」創刊
同倶楽部が理想とするのは、快適な生活と楽しいイベントがある地域コミュニティーをこの地区につくること。それを見える形にしたものが、1月に創刊した情報誌「PeRRY」(ペリー)だ。
同倶楽部の会員で、ペリー編集人を務めたグラフィックデザイナーの中川憲造さんは、アートのように楽しめる工事現場の仮囲いを創刊号の特集に選んだ。カバーに使ったのは、横浜の名所を赤い活字で書き出した横浜駅西口の仮囲いのデザイン。ほかに、子どもたちが描いた船の絵で埋め尽くされた日本大通りの仮囲いや、修復中に国旗を思わせる幕に包まれたフランスの凱旋(がいせん)門など、国内外の例を紹介している。
これは、長い工事期間が予想される関内地区への、「都市ができるプロセスも美しくあるべき」(中川さん)という提案でもある。次号は春ごろの発行を予定。「隠れている街の魅力を顕在化させるとともに、倶楽部が果たす役割を市民に知ってもらうメディアに」と意気込む。

同倶楽部では、街なかに出すバナー広告を見て楽しいデザインで制作することや、市民活動などができる新市庁舎低層部のあり方といった提案をすでにしている。「横浜をどう良くしていくか、どう良く見せるかが重要。まちづくりの最大で最後のチャンスになる」と近澤さんは力を込める。
「ペリー」は通信販売のほか、マリンタワーショップ、エクスポート(大さん橋)など4店舗で取り扱っている。1296円。問い合わせは、メイドインヨコハマ電話045(224)4796。