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愛する横浜、物語に アニメーション・ディレクター、伊藤有壱さん

横浜みなと新聞 | 神奈川新聞 | 2016年6月27日(月) 11:17

レンガくんとポーズを決める伊藤有壱さん=横浜港大さん橋国際客船ターミナル
レンガくんとポーズを決める伊藤有壱さん=横浜港大さん橋国際客船ターミナル

 高校生のころに見た横浜赤レンガ倉庫は高い柵に覆われていた。使われなくなり、落書きされても、再び脚光を浴びる時が来るまで耐えているようだった。

 「古い建物って、まるでおじいちゃんみたい。建物が生き物だとしたら『レンガ』は細胞なのかもしれない-。そんなアイデアから、こいつが主人公になるお話を考えました」

 短編アニメ映画「HARBOR TALE(ハーバーテイル)」(2011年)は横浜をモデルにした港町で、洋館から抜け出した一片のレンガが街の魅力を発見する旅に出る物語。上映時間はわずか18分だが、制作には5年をかけた。監督の伊藤有壱さん(53)は「頑張って撮影できるのは1日に10秒ほど。作っては考え直しを繰り返して、何度も気が遠くなりました」と笑う。

 作品には、古くから使われている物や道具には命が宿るという「九十九神(つくもがみ)」の考え方が根底にある、という。

 160年に満たない歴史しかない横浜は、何度も復興を遂げ成長し続けてきた。「それは、まるで一つの生き物のよう。この横浜に命があるとすれば、その心臓はきっとミナトにあるはず」。明治期にシルクなどを輸出すると、西洋文明が一斉に入ってきた。「激しく熱したるつぼの中のように、エネルギーが渦巻いていた」。描きたかったのは、ミナトの物語だった。

 クレイと呼ばれる粘土や人形をこま撮りしたアニメが得意で、東京を拠点にNHK・Eテレのクレイアニメ「ニャッキ!」監督を20年以上続けてきた。本籍もある横浜にスタジオを引っ越したのは10年前。世界のアーティストたちは自分が暮らす場所に誇りを持ち、作品を生み出す。「その姿に刺激を受け、残りのクリエーティブ人生を横浜から発信したい」

 横浜での代表作となったハーバーテイルに登場するモデルは、来年に建造100周年を迎える横浜市開港記念会館や、進水してから今年で86周年を迎えた帆船日本丸など。そして、大きな口から乗客らが乗り降りする客船「貴婦人」が着岸するのは横浜港大さん橋国際客船ターミナルだ。

 「大さん橋は、まさに『レンガくん』が見た景色そのもの。ここで157年目の開港記念日(6月2日)をお祝いしたい」と、今月4日から無料上映会を催したところ、会場はほぼ満席となり、期間を19日まで延長した。

 ハーバーテイルは世界30以上の国際映画祭で上映され、チェコのズリーン国際映画祭アニメ部門最優秀賞と観客賞のダブル受賞を果たすなど、国際的な評価は高い。今年もスペインの映画祭で紹介する運びだ。

 「海外の映画祭では横浜を知らないはずの人たちが横浜の景色を面白いと言ってくれる。ほぼリアルに横浜のたたずまいを表したことで、『レンガくん』がこの港町に本当にいるかもしれないと思ってくれたらいいですね」


ハーバーテイルのワンシーン。「貴婦人」に人々が乗り込んでいく(C)I.TOON 
ハーバーテイルのワンシーン。「貴婦人」に人々が乗り込んでいく(C)I.TOON 

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