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灯台女子 文化的価値保全を

横浜みなと新聞 | 神奈川新聞 | 2016年6月6日(月) 16:44

横浜北水堤灯台のLED灯器について解説する不動さん
横浜北水堤灯台のLED灯器について解説する不動さん

 「カープ女子」「歴女(歴史女子)」など、特定の事物に熱烈な愛情を注ぐ女性たちが話題になる中、灯台を愛する「灯台女子」も登場した。フリーペーパー「灯台どうだい?」を発行する“第一人者”の不動まゆうさん(39)=東京都=に、灯台愛を語ってもらった。

 5月16日、横浜北水堤灯台の点灯120周年を記念した見学会で、一日横浜海上保安部長として案内役を務めた不動さんは、灯台へ向かう同保安部の船内で胸の高鳴りを抑えられなかった。「憧れの大スターに会えた気分」と、カメラのシャッターを夢中で切る。

 「防波堤に建設された日本初の灯台」「東京湾に残された唯一の明治期に建設された灯台」など、歴史を語れば立て板に水。灯台の中でも珍しい鉄造で「リベット(鉄板の接合部品)が灯台女子の“萌え”ポイント」と興奮気味に解説した。

 不動さんが灯台に目覚めたのは2006年。失恋がきっかけだった。静かな場所で考え事をしたいと城南島海浜公園(東京都大田区)を訪れたが、夜の海は「墨汁のように漂い、癒やされるどころか怖くなるばかり」。海の中から定期的に飛んでくる光だけが温かく感じられ、救われた。帰宅後に調べて、それが東京灯標(10年に廃止)の光と知った。

 以来、この10年で300基以上を訪れた。平日は音楽関係の学芸員として働き、休日は国内外の灯台巡りの日々。最愛の1基はフランスのコルドゥアン灯台(1611年建設)。というのも、不動さんは特に灯台レンズのマニアで、コルドゥアンは大好きな「フレネルレンズ」が世界で初めて入った灯台だからだ。

 フレネルレンズはフランス人のオーギュスタン・フレネルが発明し、現在でも灯台に使われているが、発光ダイオード(LED)灯器が登場したことで数を減らしている。光の反射と屈折を利用し同心円状にプリズムレンズを配置することで、光を集める効果を損ねずにレンズを薄くすることができ、レンズの回転や設置を可能にしたものだ。

 「宝石のカッティング」のようなレンズから夜の海に放たれる光は「ダイヤモンドからハレー彗星(すいせい)の尾が出ているような美しさ」と心酔する。国内でも室戸岬灯台など長い光達距離が必要な灯台に残る。

 近年、灯台の廃止が相次いでいる。海上保安庁によると、衛星利用測位システム(GPS)やレーダーの普及が背景にあるという。

 「灯台の文化的価値を知ってもらい、保全につなげたい」との思いで2年前から自費で「灯台どうだい?」を発行、これまでに10号を数える。昨年の企画で灯台ファンの女子会を開いたことが「灯台女子」の肩書につながった。

 ちなみに灯台女子会も、今年で13回目を数える灯台フォーラムも会場は横浜。「港の雰囲気があって、陸上から灯台の光がいくつか見えるのは横浜の特権。地元でも灯台を愛してもらえれば」と話している。

 「灯台どうだい?」は県内では観音埼灯台、横浜みなと博物館、海上保安資料館横浜館、江の島の灯台グッズ店「Lighthouse Keeper」で無料配布中。


不動さんが編集長を務めるフリーペーパー「灯台どうだい?」
不動さんが編集長を務めるフリーペーパー「灯台どうだい?」

不動さんが「宝石のカッティングのよう」とほれこむフレネルレンズ。横浜北水堤灯台で2009年まで使われていたレンズは海上保安庁横浜海上防災基地に展示されている=横浜市中区
不動さんが「宝石のカッティングのよう」とほれこむフレネルレンズ。横浜北水堤灯台で2009年まで使われていたレンズは海上保安庁横浜海上防災基地に展示されている=横浜市中区

横浜北水堤灯台の点灯120周年を記念して一日横浜海上保安部長に任命され、灯台案内役を務めた不動さん(中央)=5月16日
横浜北水堤灯台の点灯120周年を記念して一日横浜海上保安部長に任命され、灯台案内役を務めた不動さん(中央)=5月16日
 
 

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