太平洋中心部での海洋プラスチック汚染の実態調査に、海洋研究開発機構(JAMSTEC、横須賀市)などが取り組んでいる。研究者らが横浜港から乗り組んだのは、太平洋の島国・パラオを目指すヨットレースに伴走する帆船。海洋環境への負荷を最少限にとどめる移動手段を選ぶことで、調査が及んでいない海域での実態解明に挑む。
調査は、海中を漂う微小なプラスチックごみ(マイクロプラスチック)を採取する小型装置を、約3200キロ南のパラオまで伴走する帆船「みらいへ」と、出場した7艇のうち1艇に設置。約2週間の航行中にプラスチックごみの分布状況を解析するとともに、生態系への影響の分析に役立てる。
乗り組んだ研究者は、JAMSTEC地球環境部門海洋生物環境影響研究センターで海洋プラスチックを研究する千葉早苗さん。ヤマハ発動機から同社セーリングチームの元選手関友里恵さん、国連環境計画のホリー・グリフィンさんも乗船し調査をサポートする。
出港前日の昨年12月28日、パラオのトミー・レメンゲサウ大統領をはじめ、研究者やレース関係者が一堂に集まった前夜祭が横浜市内で開かれた。あいさつに立ったレメンゲサウ大統領は「画期的なマイクロプラスチック調査が行われることは大変喜ばしい」と歓迎。JAMSTECの阪口秀理事は、ヨットマンと海洋研究者はいずれも海に関する知識や知見、環境や生態系への関心を持っているとし、「一緒にできることはないかと考え出した」と、環境負荷の少ない調査方法として帆走のレースに注目した経緯を説明した。
帆船にはパラオの子どもたちや日本の青年たちも乗船し、マイクロプラスチックの分布状況を一緒に調べる。阪口理事は「将来の海についてみんなで考え、次の世代に向けて私たちは何をすべきかを考える授業を船上で開きたい」と語り、地球規模の海洋環境問題に挑む若者たちが両国の交流の架け橋になることに期待した。
汚染広がり容認できない パラオ大統領
海洋中を浮遊するマイクロプラスチックはパラオの沿岸や最大都市のコロール市内の湾でも発見されている。これは恐ろしい結果であり、プラスチック汚染の脅威はどこの海でもあるということになる。見えない有毒な汚染が広がり、海洋生物や海産物を食する人間へもリスクが及ぶことは容認できない。
日本からパラオへの航海の中で画期的なマイクロプラスチック調査が行われることは大変喜ばしい。われわれを養う海を保全し、将来を守る責任があることを世界に示そう。