横浜市中区の「泰生ビル」の一角に、企業主導型保育施設「ピクニックナーサリー」が今月開園した。同ビル内で活動していた子育て広場を発展させた、温かい雰囲気の小さな施設。さらに、出産などを機に仕事から離れた母親が、自分の子どもと一緒に働くことができる場としての機能も持っている。
杉板の床としっくいの白い壁に囲まれた室内に、明るい日差しが差し込む。6日に行われたナーサリーの開園式には、乳幼児と母親ら約20人が集まった。園長を務めるのは、保育士や家庭保育福祉員として40年以上子どもと関わる管谷章世さん(70)。「お子さん、保護者、ここで働く人も、みんな楽しく安心な保育園にしたい」と話しながら、小さな人形を使ったエプロンシアターを披露すると、子どもたちが目を輝かせて見入った。
ピクニックナーサリーの前身は、昨年10月に同ビルで開所した子育て広場「カドウエママピクニックルーム」だ。スタッフに子どもを任せて母親がのんびりしたり、ちょっとした相談ができたりする場は人気を集め、週3日の開所日には親子連れが続々と集まった。
この状況から、広場の代表でナーサリーを運営するピクニックルーム代表取締役の後藤清子さん(39)が事業化を考えた。さまざまな制度を調べ、企業が運営する認可外の保育事業で、開設・運営に国から助成金が受けられる「企業主導型保育事業」を使って開園。約50平方メートルの室内には、畳のスペースや調理ができる設備もある。「広場のときと同じように、小規模で親子とも安心して通える雰囲気を大事にした」という。
ナーサリーの大きな特徴は、保育者6人のうち4人が結婚や出産などを機に仕事から離れた女性で、子ども同伴で勤務することだ。
施設の定員は10人で、対象年齢は0歳から2歳まで。事業の特徴として、定員の一部は従業員の子どもが利用する。それを保育者の枠とし、子どもをその場で預けて働けるようにした。広場を通じて知り合った母親も勤務する。後藤さんは「働くことについて悩んでいた女性のキャリアも戻したい。社会に向くことで、子どもとの向き合い方も変わるはず」と話す。
中区に住む看護師の女性(32)もその1人。2歳の娘と広場を利用し、管谷さんらの助言を心強く感じた。「4年ほどブランクがあるが、働きたいと思っていた。でも、そのために預けるところがない」と考えており、ナーサリーの開園に合わせ娘と同伴で勤務することになった。「無理なく始められてよかった。子どもも楽しそうなので、大丈夫かなと思っている」。今後、働きながら保育士の資格取得も考えている。管谷さんは「ここのような働き方で自信を付けて飛び立って行けたら、本人にも社会にとってもいいこと」と母親たちを見守る。
前身の子育て広場で、「母親は孤立しがち。産休中の人も専業主婦にも悩みがあると感じた」と後藤さん。ナーサリーでは、そんな母親のための新たな子育て広場事業も行う。小学生を対象に、「塾と学童保育の間」のような事業も展開していく予定だ。保育施設を活用したい企業も募っている。後藤さんは「新しい子育て支援の形を模索したい」と話す。
問い合わせは、ピクニックナーサリー電話045(264)8584。