
客船ターミナルと商業施設、ホテルが融合した複合施設「横浜ハンマーヘッド」が、横浜・みなとみらい21(MM21)新港地区に開業した。施設の名称の由来は、横浜港・新港ふ頭の象徴である歴史遺構「ハンマーヘッドクレーン」。横浜開港160周年に当たる今年、先人たちが築いてきたミナトの遺産を生かすことで横浜の未来を開こうと思いを込めた。
ハンマーヘッドクレーンは1914年、国が貿易量の増大に対応するために整備した新港ふ頭の岸壁の先端部に設置した。はしけや貨物船が着岸して貨物の積み降ろしを行うための港湾荷役専用クレーンで高さ約30メートル、つり上げ能力は50トン。23年の関東大震災では新港ふ頭の大半が水没したがクレーンは倒壊せず、震災復興にも貢献した。
新港ふ頭は、かつて日本の貿易を担った横浜の海の物流の中心だった。同型のクレーンは日本に3基しか現存しないが、港湾荷役専用は横浜港のみ。横浜港振興協会会長の藤木幸夫さんは「ハンマーヘッドクレーンは横浜港で働く私たちの誇りだった」と振り返る。

10月31日に開業した横浜ハンマーヘッドの開発・運営を手掛ける新港ふ頭客船ターミナル社長の岡田伸浩さん(横浜岡田屋社長)は「100年以上にわたって私たち横浜の発展を見守ってくれたハンマーヘッドクレーンに心からの感謝を込めて、この施設の名前を付けた」と話す。
特に港湾労働者の思いを受け止めて「“荷役の歴史”を継承し、また新たな文化や価値を生み出す場所として再出発する」と意気込みを新たにしている。
地上5階建て、総床面積約3万平方メートルの施設外観はクレーンと一体化したデザインを目指した。このうち商業施設「ハンマーヘッド SHOP&RESTAURANT」は、ミナトの倉庫をリノベーションしたかのような空間を演出。「食」をテーマにした体験・体感型の店舗をそろえた。施設ロゴにもクレーンを採用した。

バス路線も開通して周辺地域へのアクセスが高まることから、岡田さんは「地区全体の活性化を図ることで、かつての物流の中心地を、にぎわいの中心地にしたい」との願いを込める。
11月4日には大型客船「ダイヤモンド・プリンセス」が第1船として着岸し、こけら落としに花を添えた。同日夕、大勢の市民らが見送る中でライトアップされたハンマーヘッドクレーンが華やかに船出を飾っていた。