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数奇な運命伝えたい ミナト舞台2作品で監督

横浜みなと新聞 | 神奈川新聞 | 2019年10月16日(水) 10:20

自身の映画作品と横浜港の関わりを語る中村監督=大さん橋
自身の映画作品と横浜港の関わりを語る中村監督=大さん橋

 ドキュメンタリー映画「ヨコハマメリー」(2006年公開)で監督デビューした中村高寛(たかゆき)さん(44)の作品に、横浜港がたびたび登場している。2作目の「禅と骨」(16年公開)でも氷川丸や山下公園が写し出された。横浜港は開港の地であり、戦後は長らく接収されるなど、日米の近現代史の荒波に翻弄(ほんろう)されてきた。横浜出身の中村さんは「ミナトに刻まれた数奇な運命を後世に伝えたい」と語る。

 「ヨコハマメリー」は戦後の横浜の街角に立った日本人娼婦(しょうふ)の半生を追った。白塗りの化粧に純白のドレスを身にまとっていたメリーさんは撮影開始時、横浜から姿を消していた。彼女を知る人々が中村さんのインタビューに応じ、メリーさんと戦後の横浜を語っている。


「禅と骨」公開前日に飲食店でポスターにサインする中村監督=2017年9月、横浜市中区
「禅と骨」公開前日に飲食店でポスターにサインする中村監督=2017年9月、横浜市中区

 大さん橋から出航する船を見送る人の中にメリーさんの姿を見たのは舞踏家の大野慶人さん。メリーさんは米軍将校らしい人物との別れを惜しんでいた。

 メリーさんが戦後しばらく横浜を去らなかったのはなぜか。いつか将校が横浜に帰ってくると思っていたのではないだろうか-。多くの証言が観客にそう想像させる。映画では米兵らと日本人女性の間に大勢生まれた「GIベビー」にも触れている。

 中村さんは「メリーさんや当時の日本人にとって、人生を大きく翻弄(ほんろう)させたアメリカとは何かということを表現するために横浜港を象徴的に使いたかった」と振り返る。 

 2作目のドキュメンタリー「禅と骨」は、京都・嵐山の天龍寺の一隅で暮らした禅僧ヘンリ・ミトワさんが主人公。横浜で米国人の父と日本人の母の間に生まれた日系米国人。戦前、横浜での監視の目に耐えかねて氷川丸に乗って米国に渡るが、戦時中は日本人収容所での生活を余儀なくされるなど戦争に運命を握られながら青年期を過ごした。


「禅と骨」の一場面(c)大丈夫・人人FILMS
「禅と骨」の一場面(c)大丈夫・人人FILMS

 晩年は童謡「赤い靴」をモチーフにした映画作りに執着し、山下公園に巨大な観音像を作るという壮大な夢を描いた。生前のミトワさんとその実現を約束した中村さんは映画の中で赤い靴をアニメで制作し、観音像を銀幕上に再現した。

 「ミトワさんは赤い靴の少女に自身を重ね合わせ、観音像は自身の母親をイメージしたのだろう」と中村さん。「ミトワさんにとって観音像は母性の象徴し、赤い靴の少女は離れた母を慕う思いがあったのでは」といい、「単純に恋い焦がれるというものではない、横浜港で多くの人々が抱いたアメリカへの複雑な思いを作品から感じてほしい」と話す。

 「禅と骨」のDVDは4日発売。4104円(税込み)。レンタルも開始。問い合わせは、発売元のトランスフォーマー電話03(5457)7767。

 
 

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