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「ぼくの原点はミナト」 写真家 森 日出夫さん

横浜みなと新聞 | 神奈川新聞 | 2019年4月29日(月) 13:24

 「海の女王」が春の横浜港に現れると、世界で最も有名な豪華客船の初入港を歓迎する市民であふれた。


写真集を手に、クイーン・エリザベス2への思いを語る森さん=22日、横浜市中区のアマノスタジオ
写真集を手に、クイーン・エリザベス2への思いを語る森さん=22日、横浜市中区のアマノスタジオ

 1975年3月7日。写真家森日出夫さん(71)=横浜市中区=は、小型ヘリコプター「ヒューズ300」で、当時世界最大の客船「クイーン・エリザベス2」(QE2、7万327トン)を撮影していた。当時27歳。気鋭の写真家は横浜港の上空を何度も旋回し、きらめく海に浮かぶ純白の船体に目を見張った。

 森さんにとっても、これまでに見たことがない美しい客船だった。この船は「全てが特別な存在」。高校時代から、義兄で航空写真を得意とした写真家の故・天野裕之さんの仕事を手伝う中で空撮や現像の技術を磨いてきた。飛行機酔いしない丈夫な体も評価され、初めて空撮を任されたのがQE2初入港だった。

 最後の横浜寄港となった2007年まで、森さんはQE2にレンズを向け続けた。ことし4月、開港160周年を記念したQE2写真集(2160円)を出版。市が発行した季刊誌「市民グラフ ヨコハマ」(84年特別号)の開港125周年特集にQE2の写真を掲載していたが、新たに手掛けたQE2写真集は別カットで森さんの思い入れが深いものになった。


「いつまでもかっこよくいたい」と、機材を自ら担ぐ=2017年8月、横浜市中区の山下ふ頭
「いつまでもかっこよくいたい」と、機材を自ら担ぐ=2017年8月、横浜市中区の山下ふ頭

 西区の青果店のせがれで、9人きょうだいの下から2番目。幼いころは市電に乗って三渓園(中区)そばの砂浜で父親と潮干狩りを楽しみ、取れたアサリやワタリガニが食卓に並んだ。高校時代は氷川丸や客船を撮影した。「ぼくの原点は、やっぱり横浜のミナトなんだね」と振り返る。

 だが、ミナトは大きく様変わりした。QE2は引退し、14年に初入港した後継船の「クイーン・エリザベス」(9万900トン)がことし4月から横浜発着クルーズに就航。「令和」での開業に向けて港周辺は再開発が相次ぐ。山下ふ頭(同区)では半世紀も物流を支えてきた上屋(うわや)の取り壊しが始まった。


クイーン・エリザベスの船上撮影会で「感じるままに」と自らの作風を解説=2014年3月、横浜港
クイーン・エリザベスの船上撮影会で「感じるままに」と自らの作風を解説=2014年3月、横浜港

 森さんは「こうした変化を許容してきたのが横浜気質」と考える。山下ふ頭などミナトを中心に定点的に撮影しており、「変わり続ける横浜を撮り続けていて良かった。これで終わり、というのは一生ないから」

 そうして長年撮り続けた横浜の港や街、人を「森の観測」シリーズとして1992年から写真集を発表している。ことしは写真集「月刊 森日出夫」など7冊を出版予定。「あと20年は現役で頑張り、世界最高齢の写真家になるのが夢なんです」

 
 

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