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守れ歴史刻んだ建築物 県建築士会が調査隊

横浜みなと新聞 | 神奈川新聞 | 2017年3月20日(月) 11:25

村野藤吾の代表作の一つでもある横浜市庁舎。リズミカルな壁面デザインが特徴=横浜市中区
村野藤吾の代表作の一つでもある横浜市庁舎。リズミカルな壁面デザインが特徴=横浜市中区

 横浜をはじめ、県内に数多く残る歴史的建造物。それらが、耐震の問題や再開発などを理由に次々と姿を消している。その状況に歯止めをかけたいと、県建築士会(横浜市中区)の「スクランブル調査隊」が活動している。

 調査隊が発足したのは1995年ごろ。「相続できない」などの理由で、個人の住宅や商店といった地域の歴史的建造物が、マンションや別の建物に変わっていくことに危機感を持ち、部会長で1級建築士の内田美知留さんら、同会のメンバーが集まって始まった。

意匠、技術を再評価 文化財登録も支援


 内田さん自身も、和歌山県の実家にあった江戸時代の建物が、倉庫になるという建て替えを経験している。「文化財ではないが、200年建っているだけでも価値がある。そういう建物を検証し、報告書にまとめて価値の位置づけをしたい」と考えた。

 当初は、歴史的建造物が好きな仲間による同好会のような形でスタート。メンバーが見つけた建物の見学に行ったり、所有者らから情報が寄せられて調査をしたりすることを繰り返し、98年に建築士会の部会になった。

 中心になって動くメンバーは約20人で、活動はほぼ手弁当。「神奈川の建築士の精鋭がそろっている」(内田さん)と自負し、建物の調査報告書作成や、登録有形文化財とするための手伝いもしている。横須賀市の万代会館は、調査隊の報告書をきっかけに保全が決まった。


「建物は縁。そこを大切にしなければ」と話す県建築士会スクランブル調査隊部会長の内田さん=横浜市中区
「建物は縁。そこを大切にしなければ」と話す県建築士会スクランブル調査隊部会長の内田さん=横浜市中区

 歴史的建造物には、さまざまな情報が詰まっている。

 その一つが「匠(たくみ)の技」だ。木材の特質を生かした使い方のほか、建具の美しさ、金属加工などの技術力を見ることができる。「住宅は建てる人と設計者、職人など技術を持つ人の3者が、一緒になって造るものだった。今はそうではなく、『買うもの』になってしまった。一つ一つの技術が必要なくなっている」と内田さん。かつては建具や外壁などにぜいたくをする文化もあったが、それもほぼなくなった。

 耐震化を目的に壊される歴史的建造物もある。だが、その中には関東大震災をくぐり抜けたものもあった。「立っていること自体、地震に耐えているということ。その建物を使い、耐震の研究もできたかもしれない」と惜しむ。

 特に保護が手薄なのは、戦後に建てられた建物だという。だが、その時代を中心に、現代の建築物を評価しようという動きも出てきた。

 文化庁が始めた「近現代建造物緊急重点調査事業」がそれだ。日本の近現代建築物は、優れた意匠や高い技術により国際的に高い評価を受けながら、調査がほとんどされていない。そうした建物を保護するため、2015年度に神奈川でモデル調査を実施し、16年度は神奈川と奈良県で優れた建築物のリスト作成と、重要な価値を持つものに対する詳細調査を行っている。


横浜文化体育館で行われた「近現代建造物緊急重点調査」=横浜市中区
横浜文化体育館で行われた「近現代建造物緊急重点調査」=横浜市中区

 県内の調査事業には、スクランブル調査隊のメンバーも多く加わっている。村野藤吾が設計し、1959年に落成した横浜市庁舎や、横浜文化体育館などを調査した。2017年度は、個人の住宅なども手掛けるという。「神奈川で優れた仕事をした市井の設計士のことは、文献にも残っていない。その人たちの仕事にスポットライトを当てたい」と内田さんは言う。

 県内には、横浜はもちろん、かつて財界人や文化人が別荘を持った湘南地域にも歴史的建造物は多い。ただ、管理の大変さなどを理由に、所有を諦めるケースもある。調査隊はこれまでの活動に加え、建物の利用と活用のためのアドバイスを積極的に行っていくことも考えている。「歴史的建造物は活用できるということを広めたい。それにより、建物のそのままの形、良さを残して使っていくことにつながれば」。内田さんをはじめ、メンバー全員の願いだ。

 スクランブル調査隊の問い合わせは、内田さんの事務所・ルナパーク電話045(324)7151、メールuchida@lunapark.co.jp

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