宇宙を舞台にした迫力の一場面が間近に─。昨年12月、横浜港・山下ふ頭に登場した「動くガンダム」。人気アニメ・機動戦士ガンダムの“実物大”を動かすプロジェクトは、第一線で活躍するエンジニアたちの情熱と日本の技術を結集した夢への挑戦だ。「コロナ禍の希望になれば」。地元企業も連携して限定商品を打ち出すなど、静かな熱気が広がっている。
「こいつ、動くぞ」
アニメの第1話で、主人公のアムロ・レイがガンダムのコックピットで発した言葉を実現させる計画は、2014年7月に発表。高さ18メートル、重さ25トンの巨体を動かすため、ロボット研究やソフトウエア開発、デザイン分野のプロフェッショナルが集結して試行錯誤を重ねてきた。
アニメでは空中を自在に駆ける動きで魅了したガンダムだが、等身大の模型で再現するのは容易ではない。製作工程では脚を細くするなど軽量化し、首や肩など36カ所の可動部を連動して動かせるよう、専用のモーターや減速機を開発。精密な制御と力の増幅で作中の動きを追求した。
アスリート体形のガンダムは、ロボットでありながらぬくもりある仕上がりに。アニメの生みの親でもある富野由悠季総監督は「優しさを感じる」と絶賛、プロジェクトメンバーは「『動くガンダムを見たい』という10年分の宿題がやっと果たせた」と満足げに語った。
プロジェクトは横浜市と連携した取り組みで、ミナトににぎわいをもたらそうと地元企業なども多方面で参画している。
展示施設「ガンダム ファクトリー」内には、桜木町・野毛の精肉店「尾島商店」のハンバーガーをはじめ、横浜中華街「江戸清」の中華まんなど“ご当地グルメ”が楽しめるカフェを併設。オリジナル商品も多く、元町の老舗革製品メーカー「キタムラ」はキーホルダーや名刺入れを発売した。
ハーバーを展開する菓子製造販売の「ありあけ」は、ガンダムが飛び出すパッケージで新テイストのミルキーマロンを開発。堀越隆宏社長は「横浜市とガンダムファクトリーを全力で盛り上げたい」と語る。
12月18日の開幕セレモニーで、林文子市長は「コロナ禍にある世界中の人たちの心を明るく輝かせ、勇気付けてくれると確信している」と強調。生演奏で出演した県内出身のロックバンド「LUNA SEA」のSUGIZOさんは、「子どもの頃の僕に、この誇らしい思いを伝えてあげたい」と夢の実現に目を細めた。(西村 綾乃)
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公開は2022年3月31日まで。入場料は大人1650円、7歳以上12歳以下1100円。特設観覧デッキは別途3300円。営業時間など詳細は、フリーダイヤル0120─158686(午前10時~午後5時、年中無休)。
こいつ…動かすぞ 実物大ガンダムが呼んだ山下ふ頭の熱気
迫力の演出で動くガンダム=横浜市中区の山下ふ頭(C)創通・サンライズ [写真番号:490219]
横浜港を背景に動くガンダムを見学できる「ガンダム ファクトリー ヨコハマ」=横浜市中区の山下ふ頭(C)創通・サンライズ [写真番号:490220]
ガンダムの頭部をモチーフにしたありあけのガンダムハーバー [写真番号:490221]
江戸清がプロデュースした「ハロあんまん」 [写真番号:490222]
キタムラが販売するロゴ入り名刺入れ [写真番号:490223]