
米大統領選は共和党の実業家ドナルド・トランプ氏が民主党のヒラリー・クリントン前国務長官を破り、当選を決めた。
米国民は民主党政権の継続、オバマ路線の継承を拒否し、政治経験のない異端児に大胆な政策転換を託したことになる。一方、世界は想定外の接戦を驚きを持って受け止めたに違いない。米社会はもとより国際社会に動揺が広がるのは必至である。
危惧されるのは、移民、女性、イスラム教徒への差別をあおるトランプ氏の言動が、白人中間層の本音と重なり合うとみられていることだ。女性絡みの醜聞で大統領としての資質が問われたトランプ氏を押し上げたのは、私的メール問題などによるクリントン氏の信用失墜に加え、格差拡大、白人中間層の衰退を背景にした既成政治への反発とみていい。
ただし、有権者がトランプ氏に求めた変革は現状への鬱憤(うっぷん)や閉塞(へいそく)感の反映に過ぎず、確たる理念、内実を伴なったものではない。