
核なき世界の長い道のりに踏み出す歴史的な1歩である。
核兵器を違法化する初めての国際条約である核兵器禁止条約が今月初旬、国連本部で採択された。投票には124カ国が参加。国連加盟193カ国のうち6割余りの122国が賛成した。ひとまずは画期的な成果を歓迎したい。
条約は前文と20条からなる。特徴は「核の非人道性」を強調していることだ。核軍縮を巡る議論はこれまで「国家の安全保障」を前面に語られてきたが、条約では「全人類の安全保障」との理念が根本にある。ひとたび核兵器が使用されれば、人命や環境、食糧、将来世代の健康など計り知れない被害を及ぼす。
核は人類が安全に暮らすための必要悪ではなく、絶対悪である。条約をそうした理解を一層広め、廃絶していくための起点としたい。
前文には「ヒバクシャ」の文字が盛り込まれ「受け入れがたい苦痛と危害に留意」と明記された。72年前に広島、長崎に投下された原子爆弾により命を奪われた人たちの無念、残された人たちの苦しみ。被爆者の声は条約づくりの原動力となった。
禁止項目には開発や実験、製造、保有に加え「使用や使用するとの威嚇」も盛り込まれた。つまり、条約は日本が米国の「核の傘」を頼みにする核抑止力も否定している。
むろん、足らざる部分も少なくない。