
労働者の残業を巡り、労使で結ぶ必要がある「三六協定」。そのあり方について、厚生労働省の有識者検討会が議論を始めた。実質的に残業時間が無制限となり、長時間労働の温床になっているとの見方もある制度だけに論議の行方を注視したい。
労働基準法は労働時間を1日8時間、週40時間までと定めている。36条ではそれ以上従業員を働かせるには労使の合意、協定が必要としているものの、特別条項を結べばさらに残業させることも可能だ。そのため「青天井」との批判がつきまとう。
厚労省の労働時間総合実態調査(2013年度)によると、1カ月の残業時間が60時間を超える人がいる大企業の割合は43・9%で、前回調査(05年度)から7・3%上昇した。長時間化に歯止めがかかっていないのが実情だ。
働き方改革を唱える政府は、今年6月に閣議決定した「1億総活躍プラン」に制度見直しを盛り込んだ。非正規雇用の待遇改善などと並んで、議論の柱になるとみられる。
つまるところ、労働者をどういう存在としてとらえるかという理念の問題だろう。