通常国会がきょう開会する。安全保障政策や経済再生、少子化対策など、国家運営にとって極めて重要な課題が山積している。
この1年で政治を取り巻く環境は一変した。ロシアによるウクライナ侵攻によって国際情勢は緊迫し、新型コロナウイルス禍も収束していない。岸田文雄首相が昨夏に表現した「戦後最大級の難局」は、いまだに続いている。
後ろ盾だった安倍晋三元首相が死去したことによる政治力学の変化もある。諸課題にどう対処するのか。大切な国会になる。
こうした時こそ、国権の最高機関たる国会をしっかりと機能させる必要がある。難局を乗り越えるためには、安倍政権下で著しくなった国会軽視の姿勢を改め、国民的議論を尽くして対処するという原点に立ち返るしかない。
まずは、この1カ月の間に政府が勝手に決めた方針について、徹底した説明と十分な議論を求めたい。ロシアの侵攻という事態に便じるようなタイミングで、政府は安全保障政策を大転換した。原発政策でも、東日本大震災による事故の教訓を忘れたかのように新増設に向けて大きくかじを切った。
看過できないのは、その内容だけでない。どちらも昨秋の臨時国会が閉じた後になって決めたことであり、そのプロセスも問わねばならない。国のかたちが大きく変わろうとしている局面に、国会はほとんど関与できなかった。これでは独裁国家と変わらない。
岸田政権の国会軽視の姿勢は、安倍氏の「国葬」を決めたあたりから露骨になった。世論調査で内閣支持率が低空飛行を続けても、むしろ開き直ったように映る。しばらく大型国政選挙がない「黄金の3年間」をいいことに、独断専行の政権運営をいよいよ強めているのではないか。「聞く力」のアピールも、すっかり少なくなった。
岸田首相は自民党総裁選などの機会に「民主主義の危機」を訴えた。「信頼と共感の政治」という言葉もたびたび口にしてきた。難局を克服するために必要なことは何か。あらためて自覚した上で国会に臨むことを求めたい。