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ヘイト禁止条例1年 「差別根絶」実感の日を

社説 | 神奈川新聞 | 2020年12月12日(土) 09:50

 差別の禁止と根絶を掲げる「川崎市差別のない人権尊重のまちづくり条例」が制定されてから、きょう12日で1年を迎えた。全国で初めてヘイトスピーチに刑事罰を科す画期的な条例として注目された。今年7月に全面施行されている。

 街宣活動やネットへの投稿などによるヘイトスピーチに苦しんできた在日コリアンらには大きな希望を与えたが、残念ながら被害が根絶したとはとても言いがたい。早くも条例の精神が骨抜きとなっていないか。むしろ差別を助長してしまっているような現状も懸念される。

 市は運用上の課題があるならば洗い出し、ヘイトスピーチを解消するという本来の趣旨に添って改善を重ねるべきである。

 形骸化の実態は現状が物語る。条例が全面施行してからも、相変わらず排外主義的な団体による街宣活動が繰り返され、聞くに堪えぬスピーチを発し続けている。

 ネット投稿という手法に対しても有効な手だてが打てずにいる。市が10月末までに調査対象とした差別投稿は約1万1千件。だがヘイトスピーチかを判断する審査会に諮問する調査を済ませたのは、約3千件に過ぎない。

 たとえば在日コリアンの女性が申告した338件のうち実際に諮問にかけられたのは14件にとどまる。ヘイトスピーチに詳しい法律家などが「人権侵害」と判断して市に申告したにもかかわらず、4%しか「差別」と認定しなかったことになる。

 差別落書きも横行する。明らかに在日コリアンを中傷する内容にもかかわらず、福田紀彦市長は当初、「不適切」と表現しただけだった。批判を受けて市が「差別」と認めるまでに、最初に落書きが発見されてから2週間以上を要した。

 ヘイトスピーチの認定に課題があるのなら、改善に向けた作業を急がねばなるまい。現状のままでは、むしろ市の及び腰の認定が逆手にとられ、許容範囲としてお墨付きを与えたように受け止められかねない。

 さまざまな論点からの検討を積み重ねた末に、ようやく制定された条例である。ヘイトスピーチがなくなったと誰もが実感できるような成果が求められよう。

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