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横浜市住宅供給公社の貢献
高齢化する団地、「地域の一員として再生」

PR | 神奈川新聞 | 2023年2月10日(金) 12:00

横浜市港南区の野庭住宅と野庭団地

 高度経済成長期、横浜市内には多くの大規模な公営住宅や団地が建てられた。港南区にある市営の野庭住宅と、横浜市住宅供給公社が分譲した野庭団地もその一つだ。竣工からおよそ50年が経過し、建物の老朽化や住民の高齢化が進んでいる。団地の管理運営が厳しくなるといった課題が浮かび上がる中、住民や行政、公社などが協力して地域の再生を目指す動きが始まっている。

管理運営の担い手不足

 「役員の欠員などで管理組合の理事会自体が成立しないこともある。そうなると何も決められなくなってしまう」

 野庭団地住宅管理組合連絡協議会(管連協)の会長を務める大力洋介さん(79)はため息をついた。同団地連合自治会会長の黒田祐輔さん(76)も「管理運営のみならず、住民の生活そのものを維持していくことが非常に大変になってきている」と危機感をあらわにする。

黒田さん(左)、大力さん

 1970年代から建設された野庭住宅と野庭団地は計6千戸を超える大規模団地だ。黒田さんによると、2800戸余りを抱える野庭団地の入居者のうち半数以上は65歳以上の高齢者。夫婦2人暮らしが多いが、1人暮らし世帯も増えてきているという。

 管連協に参加している管理組合が16、連合自治会に参加している自治会が10あるが、喫緊の課題はその担い手不足だ。通常、その役員や理事は輪番で各住民に担ってもらう。しかし80~90代の住民も増え、体調面の不安などから役員就任を断られるケースも出てきたという。

住民らがビジョン策定

 高齢化による影響が顕著に現れる中、2021年3月に市や住民、地元商店会、公社、有識者らが「野庭住宅・野庭団地の未来を考える会」を設立。地域の活性化を目指してまちづくりの方向性を話し合ってきた。

 同会はこの地域の課題や魅力を「野庭住宅・野庭団地みらいビジョン」にまとめ、それをもとにいくつかのプロジェクトが動き出した。同会から発展し、黒田さんが会長を務める「野庭住宅・野庭団地の未来につなぐ会」で各プロジェクトの進捗などが共有されている。

コミュニティーの枠を超え

 動き出した取り組みの一つが、団地内の緑道に花壇を設置するプロジェクトだ。本年度から3年間、市の助成金を受け、植栽や花の手入れを通じて緑化と多世代が交流するきっかけをつくる。

 「自分たちの敷地外でも手入れしようと思える場所に、あえて花壇を設置したんです。管理組合や自治会の枠を超えるきっかけになればいい」。大力さんは、もう一つの重要な狙いを明かした。「枠を超える」必要があるのは、大規模ゆえの課題があるからだ。

野庭団地内に設置された花壇に集まる(右から)大力さん、黒田さん、内海さん

 一つの団地といえども、その中の管理組合や自治会ごとに小さなコミュニティーができているという。「各会の中で仲が良く、居心地がいいと言う人が多いんです。それが野庭団地の良いところ」と黒田さん。一方で「活性化や再生を目指すなら小さくまとまっていてはだめ。もっと地域全体で取り組まないと」と指摘する。

 一つ一つコミュニティーの枠を超えて住民が同じ方向を向くために、花壇づくりなど地道な活動を続けていく必要がある。「そうやって少しずつ関係が深まっていけば、活性化につながっていくはず」と大力さんは先を見据える。

住民に近いアドバイザー

 大力さんらがさらに期待するのが、公社の存在だ。野庭団地を建設した主体であり、市の外郭団体として民間企業とは一線を画す「半官半民」の立場だ。大力さんは「何か外部にお願いしたいとき、まずは公社に相談しようという雰囲気をつくっていきたい」と、今まで以上に密接な関係構築を望んでいる。

公社が所有する団地内のショッピングセンター

 団地内には公社が所有するショッピングセンターがある。16年5月、その2階に公社の事務所スペースを無償貸与して「なごみのば」という交流拠点が開設された。運営は主に地元の社会福祉協議会が担い、毎週カフェが開かれたり、地域住民のサークル活動に使われたりしている。新型コロナの流行によっていったん休止したが、現在は少しずつ地域住民の集まりやイベントの利用が再開されているという。

 昨年10月からは公社内に野庭団地専用の相談メール窓口も開設した。各管理組合を対象に、組合運営や建物管理などに関する困りごとや質問を受け付ける。

 公社街づくり事業部団地再生課長の山田暁央さんは「公社は行政ではないが、民間企業と比べてより公的な立場。住民の方々に近い目線で情報提供するアドバイザーのような立ち位置でありたい」と話す。

なごみのばでリトミックのイベントが開かれ、団地内にあるこども園「関東学院のびのびのば園」の職員と交流する地域の子どもたち

事業主体としても期待

 有識者として未来につなぐ会に参加している横浜市まちづくりコーディネーターの内海宏さん(75)は「事業を展開できる公社が参画しているのは、とても恵まれている」と指摘する。

 一般的な分譲団地やマンションの場合、行政や企業が再生の検討段階から関わることは少ない。建物の老朽化と住民の高齢化が進むと、建て替えや住み替えなどが問題になるが、野庭にはそういった事業や活性化の施策を担える主体が当初からそろっているといえる。

 とりわけ公社はマンションや団地の管理組合運営を支援する事業を展開している。専門的なノウハウや情報を持ちつつ、一般の企業とは違う公平な立場で管理組合に寄り添うことができる。内海さんは「そういった情報は住民だけではなかなか得られない。施策を打てる主体という意味でも非常に重要」と言う。

 「地域の一員として活性化に貢献したい」という山田さんの心強い言葉に、大力さんは「一肌も二肌も脱いでもらえたら」と期待を込める。公社という強力なメンバーの力を得ながら、より魅力的でいきいきとした野庭をつくっていく挑戦は、始まったばかりだ。

(編集・制作=神奈川新聞社デジタルビジネス局)
(提供=横浜市住宅供給公社)

 
 

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