鉄道開業150年⑥
未来へ走る リニア中央新幹線
PR | 神奈川新聞 | 2022年10月14日(金) 00:00
品川~名古屋間の開業に向けて、工事が進められているリニア中央新幹線。県内には相模原市緑区のJR・京王線橋本駅近くに「神奈川県駅(仮称)」が設けられる計画で、工事が進められている。5月末には、地下駅が巨大なスケールで構築されつつある様子が報道各社に公開された。JR東海中央新幹線神奈川西工事事務所の當目雅人所長のインタビューも交え、次世代の高速鉄道の姿を紹介したい。
時短効果 新たな商機に
JR東海中央新幹線神奈川西工事事務所 當目雅人所長インタビュー
JR東海中央新幹線神奈川西工事事務所の當目雅人所長に、リニア中央新幹線の計画や開業後の県内への経済波及効果などについて聞いた。
中央新幹線は、開業から半世紀以上が経過した東海道新幹線の将来の経年劣化や大規模災害などへの抜本的な備えとして、当社の自己負担を前提に建設を進めています。当社の経営の生命線である東京~名古屋~大阪の日本の大動脈輸送を二重系化することでリスクを低減し、当社の使命を将来にわたって果たしていきます。
中央新幹線の高速性による圧倒的な時間短縮効果は、大きなビジネスチャンスになり、経済発展につながると考えています。県内についても、東京や中京圏、近畿圏との時間距離が飛躍的に縮まり、例えば神奈川県駅(仮称)から各駅停車タイプで、品川まで10分程度、名古屋まで60分程度で移動が可能となります。また東海道新幹線は、「のぞみ」(速達タイプ)のお客さまが中央新幹線に移ることでダイヤに余裕が生まれ、「ひかり」「こだま」の増発など、利便性向上につながる余地が拡大します。
神奈川県駅(仮称)は2019年11月に着工し、現在は地下駅の掘削を進めています。駅中央部は地下20メートル程度まで掘り進め、本年度中に駅本体構造物の構築に入る計画です。県内ではほかに、川崎市内で大深度地下トンネルを掘削するための5カ所の非常口立坑を整備するとともに、相模原市内で山岳トンネルの掘削工事などを進めています。
今年1月からは、地域の皆さまにより一層のご理解をいただけるよう、工事等を解説するパネルや模型を用意し、個別のご質問も承る「さがみはらリニアブース」を、相模原市緑区で月2回程度開催しています。既に900人以上にお越しいただき、「理解が深まった」とか、「開業が楽しみだ」というお言葉をいただいています。
引き続き、「工事の安全」「環境の保全」「地域との連携」を重視しながら工事を進めてまいります。
未来を掘る 神奈川県駅(仮称)建設現場
雑踏するターミナル駅の間近に、巨大な“穴”ができていた。はるか下に重機が動いているのが見える。5月末、報道各社に初公開されたリニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮称)」の建設現場だ。かつて県立相原高校があった広大な敷地に、深さ約30メートル、最大幅約50メートル、長さ約680メートルの3層構造の地下駅を造るべく工事が進められている。
駅の大部分は開削工法、つまり地上から掘り下げていく手法で建設される。高校跡地とあって、工事ヤードの空間を十分に取ることができるためだ。
道路や鉄塔などに接した箇所は、あらかじめ仮土留め壁を設け直下に掘削していくが、周囲が広い箇所では、地上から斜めに掘り進むことができる。一帯が関東ローム層という固く締まった地層で安定していることも、こうした工法を採用できる要因という。
工事用に架設された橋桁から地下駅を見下ろすと、スケール感が分からなくなってくる。映像で見る海外の露天掘り坑のようだし、掘り下げた斜面に設けられた道路を下る大型トラックが、ミニカーのようだ。

(右上)建設現場はスケール感が分からなくなる巨大さ
(左下)神奈川県駅(仮称)の駅舎の中心部
(右下)泥汚れを外に出さないよう洗浄されるトラックの車輪
橋本駅周辺のこれから
人と企業の交流拠点に 本村 賢太郎 相模原市長
文明開化の世を駆けた陸蒸気(おかじょうき)、高度成長期の夢を乗せた東海道新幹線と、鉄道は国土の発展に大きな役割を果たしてきました。そして今、リニア中央新幹線がわが国に新たな夢と可能性をもたらします。その一翼を担い、発展していくのが橋本駅周辺となります。
橋本駅周辺は、「都市と自然がベストミックスした相模原市」を象徴する、可能性にあふれたまちです。多数の大学や研究機関が所在し、さがみロボット産業特区に指定された地域特性を生かしてロボット関連等の産業が集積している一方、神奈川県民の水がめとして欠かせない五つの湖や清流を育む豊かな森林にも近く、車で十数分も走れば水辺を舞う無数の蛍を楽しむことができる、自然にも恵まれた地域です。
こうした立地を最大限に生かし、三大都市圏を結ぶ交流拠点として広域ネットワークの形成を着実に推進するとともに、県内唯一のリニア中央新幹線駅として「誰もが利用したくなる駅」となるよう、人や企業が集い交流することで新たな価値(イノベーション)を創造する、魅力あふれるまちづくりに取り組んでまいります。
都市基盤整備 大改造の構想も
リニア中央新幹線の「神奈川県駅(仮称)」の開業で大きな変化が予想される橋本駅周辺を巡り、地元の相模原市は「橋本駅周辺整備推進事業」を進めている。区画整理を伴う都市基盤整備や、「まちづくりガイドライン」の策定など、これから徐々に青写真が見えてくるだろう。
市は、隣接する相模原駅周辺を含む一帯を「首都圏南西部の中核」「広域交流拠点」と位置付ける。中でもリニア、JR横浜線・相模線、京王相模原線の乗換駅として重要性が増す橋本駅については、大改造が予想される。「駅・まち一体のまちづくり」を掲げ、京王線の駅舎の移設なども構想されている。現在の姿は大きく変わる見通しだ。
工事の疑問にお答えします
「神奈川県駅(仮称)」の建設が進む相模原市緑区に、リニア中央新幹線の計画や工事の情報を広報する「さがみはらリニアブース」が、今年1月に開設された。マンション1階の入り口を展示スペースに改装した空間で、開催日にはJR東海の担当者が待機し、質問することもできる。
会場では、超電導リニアの仕組みや中央新幹線の概要などをパネルで解説。トンネルを掘削する円筒形の「シールドマシン」の模型とともに、掘削計画も示されている。工事を巡る不安を解消してもらう目的で、JR東海が初めて設けた。
所在地は同区西橋本3丁目。橋本駅近くの新駅予定地から徒歩20分ほど離れた住宅地にあり、真下をリニアが通過する計画だ。今年は10月29日、11月8、27日、12月14日のそれぞれ午前10時~午後5時に開催する。入場無料、予約不要。問い合わせは、同社中央新幹線神奈川西工事事務所☎042(703)4781。
(企画・制作:神奈川新聞社クロスメディア営業局)
未来へ走る リニア中央新幹線
最新の車両であるL0系改良型試験車(JR東海提供) [写真番号:1117037]
トンネルを掘削するシールドマシンの模型を使い説明する當目所長=さがみはらリニアブース [写真番号:1116933]
[写真番号:1117043]
広大な区域を掘り下げ、地下駅の構築が進む神奈川県駅の予定地=5月、相模原市緑区 [写真番号:1116934]
[写真番号:1116932]
相模原市 本村 賢太郎 市長 [写真番号:1117040]
リニア中央新幹線の計画や経緯などを写真や模型などで展示した「さがみはらリニアブース」=相模原市緑区 [写真番号:1117041]