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未来を創る川崎 国内初稼働の量子コンピューター

PR | 神奈川新聞 | 2021年12月24日(金) 00:00

 国内初となるゲート型商用量子コンピューターの稼働が2021年7月、川崎市の産官学連携の創造的研究開発拠点「新川崎・創造のもり」(幸区)で始まった。次世代の高速計算機である量子コンピューターは、将来の産業競争力を左右するだけではなく、気候変動やパンデミックなど、地球規模の課題解決の原動力となることが期待され、世界で開発競争が激化。「あらゆる分野で革命的な変化を生み出す可能性があり、新たな発想で世界を導くような次世代の育成に大きな力となる」(福田紀彦市長)とも期待されている。量子コンピューターの可能性や未来について、東京大学の相原博昭理事・副学長に話を聞いた。

量子コンピューター IBM Quantum System One「Kawasaki」

創薬・化学・金融分野で力 実用化へ人材育成期待

 設置されたのは、IBMが開発し、東京大学が使用権を占有する量子ゲート式の汎用(はんよう)タイプで、アジアでは初めての設置となった同社商用機の一つ。「Kawasaki」(「新川崎・創造のもり」で稼働中のIBM Quantum System Oneの呼称)と名付けられ、一辺約3メートルの立方体のガラスの中に、高さ約1.5メートルの円筒がつり下げられている。

 量子は、原子や電子、陽子などの、粒子と波の性質をあわせ持った、ナノサイズ(1メートルの10億分の1)以下のとても小さな物質やエネルギーの単位。量子コンピューターは、振動や熱など周囲の環境からの影響や量子同士の干渉でエラーが生じやすい。このため「Kawasaki」は、内部を絶対零度(マイナス273.15度)近くの極低温に冷やす必要がある。今回、IBMの基礎研究所が在り、地盤などの諸条件も満たし安定稼働が可能な「新川崎・創造のもり」内への設置が決まった。

 量子コンピューターといえば、最先端のスーパーコンピューターで1万年かかる計算が数日、数時間で解ける可能性が話題になるなど、計算処理の速さが大きな期待を集めている。「といっても、何でも速いというわけではなく、得意な分野がある」と相原理事・副学長。その分野とは、「新素材開発などの化学、新薬をつくる創薬、金融」などだ。

東大理事・副学長の相原氏

 「特に薬の開発では、どういう分子構造のものが役に立ち、副作用を出さないか、などの可能性を全て探らないといけない。それを人間が一回一回試すのではなくコンピューターでシミュレーションしているが、従来型のコンピューターの計算処理では、膨大な組み合わせを全て試すには時間的限界がある。分子、原子などの単位を基本としてさまざまな現象を扱う量子力学に基づく量子コンピューターでは、従来型コンピューターに比べ画期的に早く結果にたどりつける可能性がある」

 ただし、量子コンピューターの実用には、ハードやソフトの面での課題が残り、まだまだ時間がかかるといわれる。しかし、実機が設置されたことで「開発速度が急速に加速している」と相原理事・副学長は続ける。

 これまで、IBMがクラウド上に展開する米国にある同型の量子コンピューターは、世界中からアクセスされ、順番待ちの状態だった。「専用のコンピューターができ、すぐ使えるというだけではなく、目の前にあるというインパクトは大きい。使うほどに新しいものができ、技術の最先端にいるという実感があり、開発者や研究者の意欲が刺激される」

IBM量子コンピューティング・システムの内部

 「Kawasaki」を利用できるのは、東大が2020年に設立した量子イノベーションイニシアティブ協議会に参加している慶應義塾大学、金融、化学、電気、情報、エネルギー分野など、現在14法人。「今は、ビジネスでの応用可能性や人材育成を中心に研究、学習に注力し、新しいアルゴリズムの発見など、ビジネスにインパクトを与える研究成果も生まれている。このユーザーコミュニティーを大きくすることが、開発と実用化を加速させる有力な手段。異分野の交点が思わぬ発見につながり、これまでも科学は発展してきた」

 「日本の科学技術のためにも、挑戦し続けないといけない。研究するものすべてが実を結ぶわけではなく、まさに宝探しだが、挑戦しないと結果は出ない」。そのためにも人材育成が肝要といい、今後は子どもたちを対象に量子コンピューターを見学する機会も検討しているという。「最先端の本物を教材にするのはいい体験だ。最先端技術を担う人材を育成するには、最先端のところで育てるのがいい。川崎市とも連携し、人材育成にも取り組んでいきたい」

 そうして育った人材が、人工知能(AI)やスーパーコンピューターなどとのネットワークを活用して、新たな産業革命を起こす可能性がある。相原理事・副学長は、「5年単位で画期的な変化が起きると思う」と、今後への期待を語った。

集積進む世界最先端技術 新川崎・創造のもり

 量子コンピューター「Kawasaki」が置かれている「新川崎・創造のもり」は、首都圏最大級のイノベーション拠点。社会課題の解決につながるような研究・開発をしている企業・大学などが集積している。

 ものづくりのまちとして発展してきた川崎市は近年、知識集約型・高付加価値型へと産業構造の転換が進み、さらなる新産業の創出を目指そうと、産官学連携による先端技術の集積拠点として整備されたのが、「新川崎・創造のもり」だ。2000年開設の慶應義塾大学新川崎タウンキャンパスを皮切りに、かわさき新産業創造センター「KBIC(ケービック)」本館(03年開設)、量子コンピューターが置かれているナノ・マイクロ産学官共同研究施設「NANOBIC(ナノビック)」(12年開設)、そして19年には続いて産学交流・研究開発施設「AIRBIC(エアビック)」が開設し、段階的に整備を進めてきたエリアが完成した。8千平方メートルを超える研究スペースでは、50を超える企業などが「川崎発」のイノベーションの創出に向けてさまざまな研究開発を行っている。

 例えば、被ばくがなく安全に血管やリンパ管の画像診断ができる装置の開発や、再生医療による心臓病治療の実現、老朽化した橋など社会インフラの点検ロボットの活用、小型電気自動車開発などだ。ライフサイエンス、ロボット、環境をはじめとしたさまざまな分野の企業などが集積していることが、「新川崎・創造のもり」の特徴といえる。


大きな変革を川崎から 川崎市長 福田紀彦

福田市長

 世界で競争が繰り広げられている量子コンピューターの設置場所として、IBM量子コンピューターの米国以外では世界で2番目、日本で初となる拠点に「新川崎・創造のもり」が選ばれ、非常にうれしく思います。日本における量子コンピューターの発祥地として、ここから生まれるものに大きく期待しています。

 かつて東洋一とも称された新鶴見操車場が存在し「結節点」であった新川崎の地に量子コンピューターが設置され、多くの人や知識が集まり、新たな産業を生み出していくことに運命的なものも感じます。
 
 すでに大学・大学院などの高等教育機関では、量子コンピューターについて学んでいるそうです。本市としてもさらに若い層に向けて、量子コンピューターなどの技術を使いこなす「量子ネイティブ人材」を川崎から育てる仕組みを構築していきたいと考えています。
 
 量子コンピューターについては、我々が知る「ポケベルからスマホ」レベルにとどまらない革命的なことが起きていて、ものの考え方自体が違ってくるのでしょう。新たな発想を持った川崎育ちの若き才能が、世界をリードする産業を創出する力となってくれると思います。実機があることは、すごく大きなことで、まずは、あの神々しい実機に興味を持ってもらうことが、次世代育成の大きな力となると確信しています。

 そのためにも、産学官連携による先端技術の集積拠点「新川崎・創造のもり」を中心に、量子技術に関わる人や知識が集まり、生活をより豊かにするサービスや技術が次々と生み出されていく「量子イノベーションパーク構想」について、関係者の皆さんと考えていきたいと思います。東京大学、日本IBMと量子コンピューティング技術の普及と発展に関する協定を締結していますので、その枠組みをフルに生かして、市内で研究開発を進めている企業や研究機関との連携も視野に、「集積が集積を呼ぶ」環境を進化させていきます。

 産業の移り変わりは目まぐるしく、令和6年に市制100年を迎える本市も、大きな転換を図りながら進化を遂げてきました。その最たる例が、川崎区のオープンイノベーション拠点「キングスカイフロント」で、今やライフサイエンス分野の拠点となっています。そういった分野と今回の量子技術が結びつき、オーダーメードの創薬などの技術が、実現に近づくのではないでしょうか。川崎における研究開発と、従来のものづくりといったものが点と点、線と線、面と面で結びつき、創薬や新素材、金融などのあらゆる分野で大きな変革をもたらし、社会を大きく変容させるような成果が川崎から生まれることを期待しています。


(提供:川崎市)

 
 

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