「いらっしゃいませ」。竹山団地(横浜市緑区)内の商店街に元気な声が響く。サッカー部が昨年12月から今年1月の5日間、期間限定で運営しているカフェからだ。
なぜ、団地に学生がカフェ
同部は2020年から築50年を超える同団地を寮にしており、現在は1~3年生約45人が生活している。寮の食堂を日中の3時間ほど一般に開放するカフェは、「高齢者の社会的孤立防止」を卒論のテーマとしている4年の鈴木志遠さん(工学部経営工学科)が中心となり運営している。「これまで落ち葉拾いの清掃活動などに携わってきた。若い世代との交流を求めている高齢の方にとって、ここが居場所の一つになれば」と鈴木さん。近所に住むという内藤勝祐さん(77)は「昔、神奈川大学のそばに住んでいて、子どもと学内を散歩したりした。スポーツはずっと応援しているよ。カフェの応対は丁寧でいいと思う」とコーヒー片手に話してくれた。
団地に学生寮、当初は不安も
最盛期は1万人以上が居住していた同団地の人口は現在約6500人。65歳以上の高齢化率は44・5%にのぼる。「コロナ禍で人と人とのつながりをどう守っていこうかと思案していたところに、入居の話が舞い込み、強力な助っ人が来たとの思いを持った」と吉川勝・竹山連合自治会会長。20年3月、同団地の賃貸物件を所有する県住宅供給公社と大学が連携協定を締結し入居を開始。同年は15人、翌21年には計30人と部員の数は増えていった。当初は学生が入居することに団地内から不安の声もあったが、部員側は早朝練習に向かうバイクのエンジンを住戸の近くでかけないようにしたり、夜遅く洗濯機を回さないようにしたりするなど配慮を重ねてきた。さらに防災訓練など地域活動に積極的に関わり、吉川会長も「この子たちなら大丈夫」との思いを抱くようになった。部員と一緒に団地で生活する越水将一コーチは「今は多様性の時代。迷惑をかけることもあるが、地域の方々と互いを尊重しあえる場を学生と作っていきたい。カフェもそうだが学生は発想が豊か。寮生活によってサッカー以外の面でも成長を感じるし、地域の方も応援してくれるようになっている」と連携に期待を寄せる。
プラス・ワンの社会貢献
サッカー部の地域貢献は団地内にとどまらない。練習拠点近隣の中山商店街での清掃活動や「中山まつり」サポートのほか、J3のサッカーチームYSCC横浜と連携し、高齢化による農家の担い手不足で増加する休耕地の野菜栽培など多岐にわたっている。SDGsのさまざまな目標達成に通じる活動の根底には、部の理念「F(Football)+1(サッカー以外に一つ社会参加をする)」がある。
(次回へ続く)
(椿 真理)
(企画・制作=神奈川新聞社「2030 SDGs」編集室)
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