神奈川大学(横浜市神奈川区)は2018年9月「ダイバーシティ宣言」を発表、19年4月には「SDGsへのコミットメント」としてSDGsへの取り組み強化の決意を示している。自治体や企業、団体と連携し地域社会の課題解決へ取り組む同大の姿を通じて、SDGs達成に向けた高等教育の最前線をシリーズで紹介する。連載にあたり、兼子良夫同大学長に取り組みの背景について聞いた。(椿 真理)
─神奈川大学はなぜSDGsに取り組むのか。
本学は昭和初期の不安定な社会情勢の中、勉学意欲がありながら経済的事情で進学がかなわない若者のため、米田吉盛によって横浜に創設された。米田が唱えた「教育は人を造るにあり」は、社会貢献できる人材、社会課題を自分ごととして捉え学び行動する人材を育成するという本学の根幹。SDGsに取り組むことはその理念と合致している。
今、非常に難しい時代に入っている。例えば地球環境問題は複合的になり、総合的な知で取り組まないと解決の糸口はつかめない。SDGsには、こうした複雑な人類の課題が明確に整理され、達成すべき目標が示されている。これに照らし私たちはどう取り組み解決すべきか、正面から向き合う必要がある。大学の存在意義とは社会を先導する力を示し、未来に貢献することにある。
─経済学者としてグローバルな視点で見解をうかがいたい。
経済学には戦後社会における「貧困の解決」という視点があった。コロナ禍の今、人権や差別、それによって生み出される貧困や飢餓、社会保障などの諸問題は何も解決されていなかったことが露呈している。グローバル化の中で世界中に行き渡った民主主義思想は、ダイバーシティの論理普及など一定の成果を生んだ。一方で、人を幸せにするはずの経済発展が格差を拡大し、対立や分断をもたらしている。最近の市場メカニズムは本来守るべき人間の尊厳を忘れているのではないか。
資本主義の未来は予測不能で不確実なものだが、何のために資本主義はあるのか、私たちは何のために学び行動するか、社会とどうつながっているかを捉え直す必要がある。
環境問題を見ても、相手を破壊すれば自分にはね返ることは明らかだ。共生社会を実現するため、持続可能な社会システム構築へ総合大学として英知を結集し、新たな研究と教育を実践することが使命と考えている。
(次回へ続く)

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