
〈この街でめぐり合う色んな人と、僕ら出会って、心伝えて、力合わせて協力した〉
藤沢養護学校鎌倉分教室(鎌倉市)の生徒たちの歌声が、ホールに響く。今月5日、地域住民向けに開いた発表会のフィナーレ。全生徒の気持ちを込めたオリジナルソングに、会場から喝采が送られた。
年度末恒例の「地域大感謝祭」。活動報告の意味合いが大きい催しだが、今回は「地域への感謝をすてきな形で伝えられたら」と、曲のプレゼントを考えた。
1~3年の生徒30人全員が、地元への思い出や感謝の気持ちを文章で表現。イベントで知り合った音楽家・アラカリ大輔さん(36)=藤沢市=らに作曲を依頼し、レゲエやラップ調のメロディーを付けて歌唱曲に仕上げた。
〈満福寺の清掃場所の景色は最高でしょ〉
〈地域の人達から、季節の力、沢山の力を借りて育てた野菜が出来た〉
「細かい記述はさまざまだけど、歌詞に込めた内容はほとんど共通していた。地域の皆さんありがとう、って」。アラカリさんが目を細める。
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年間を通して地域に飛び出し、職業体験やボランティア活動に精を出す分教室の生徒たち。スーパーで野菜の袋詰めをしたり、借りた畑で農作業を体験したり、保育園の子どもたちに「お兄さん、お姉さん」と慕われたり。アラカリさんも市内のイベント「鎌人いち場」で知り合った芸術家や音楽家の一人だ。
中学校までの生活の中で、人との関わりが苦手になったり自信を失ったりして入学してくる生徒も少なくないというが、小川和豊教諭(53)は「地域の中に学びの場を求め、地域の人たちへの貢献が生徒たちの自信につながり、表情が明るくなる」。感謝祭のステージで胸を張って会場の笑いを誘う生徒たちの姿は、社会で経験を重ねて自信を深めた証しだ。
「緑地で草取りしたり、田んぼのかかしを作ったり、地域の人との思い出がたくさんある。進級しても、もっと地域とつながって町を盛り上げたい」。サビの一部を作詞した1年の荒川美樹さん(16)はこう語り、思い入れたっぷりの曲を口ずさんだ。
〈ありがとうと唄う、これからも続く恩返し/ありがとう、うたに込めて〉
分教室 県立特別支援学校高等部に所属する生徒のうち、自力通学や集団活動ができるなど障害が比較的軽度の生徒が、近隣の県立高校の一部で学校生活を送る教室で、県内には現在20カ所ある。