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県内初のミシュラン三つ星、日本料理店「幸庵」が栄冠を手にした理由/藤沢

社会 | 神奈川新聞 | 2012年1月8日(日) 10:28

県内初の「三つ星」を手にした店主の飯嶋有紀則さん=藤沢市鵠沼花沢町の日本料理店「幸庵」
県内初の「三つ星」を手にした店主の飯嶋有紀則さん=藤沢市鵠沼花沢町の日本料理店「幸庵」

学んだのは心構え―。滋賀県の日本料亭で下足番から積み上げた藤沢市の日本料理人が「三つ星」の栄冠を手にした。県内で初、世界で103店しか獲得していない栄誉に、料理人は一言、「いかに一切変わらずにいられるか。それが大事」。どこまでも真面目に取り組み、料理という枠を超えて、細部にまでもてなしの気持ちを行き渡らせた空間をつくり上げる。そこに星の理由があった。

JR藤沢駅南口を出て、駅前の雑踏を抜けて3分ほど。商業地と住宅地のはざまの一角に、日本料理店「幸庵」はある。厳選したレストランとホテルを紹介する「ミシュランガイド」の「東京・横浜・湘南2012」で、県内で初めて三つ星と認められた。

店主は飯嶋有紀則さん(40)。高校を卒業し、横浜駅近くの和食店で2年間、板前の修業を積んだ。その後、知人の紹介で滋賀県東近江市にある日本料亭「招福楼」の門をたたいた。

初っぱなから強烈な一撃を受けた。「紹介なのに、断られたんです。『うちは板前ならいらない。欲しいのは料理人』と」

それでも横浜へは戻れないと、何とか入り込んだ。

皿洗いなどもってのほか。まずは下足番、その次は庭掃除だった。雨が降ろうが風が吹こうが、葉一枚落ちていては駄目。調理場で仕込みが始まる2時間前から客を迎える準備が始まった。「もてなす」ということをこれでもかと、たたき込まれた。「建築、造園、室内装飾、そして料理。この四つに精通してこそ料理人ということでした」

文字通りの下積みを2年余り過ごした時、阪神大震災が起きた。当時ホテルの中にあった「招福楼神戸店」で人手が足りなくなり応援に駆けつけた。数とスピードが求められた。7年間、徹底的に調理を教え込まれ、後に滋賀県の本店へ戻り3年、料理人の本質に迫った。

藤沢に店を持ったのは33歳の時。招福楼の創業者の話が胸にあった。「願心を持ちなさい」。出身地の藤沢で店をやりたい。その思いで頑張ってきた。

独立直後から店の収支はどん底だった。開業資金は、最初の数カ月で底を突いた。器や掛け軸も季節に合わせて逸品をと、買い集めているうち、初年を終える前に経営難に陥った。それでも、少ない人数で、休日に仕込みをこなしては、もてなしの心をつなげてきた。

信じ続けてきたことがある。「お客はお客を連れてきてくれる」。資金繰りを含め、ようやく軌道に乗ったのはこの2年ほどという。

独立から7年。今も自ら見送りに立つ。「『おいしかったよ』という言葉に、もう一つもらえるとしたら、『また来るよ』ですね」。生真面目で厳格な「料理人」の表情に戻り、調理場へ向かった。

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