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弁護士一家殺害審理終了:「生きる者の義務」坂本堤さんの母さちよさん

社会 | 神奈川新聞 | 2011年11月19日(土) 11:33

事件が起きた時、記者は小学生だった。坂本堤弁護士の母さちよさん(80)にお会いするのは初めてだった。思いを伝えられるのだろうか。葛藤を抱え、ペンを動かした。

9月中旬。さちよさんは、息子堤さん一家が遺体で発見された新潟、富山、長野の3県に慰霊に訪れた。碑の前に立つ決意をするまでに、16年の歳月が流れていた。

さちよさんは話した。

「これまで本当に多くの方にお世話になり、今もまた、たくさんの方が息子一家を思い出し、親しんでくれています。けじめとして、命あるうちに礼を尽くさなければいけない。それが、生きている者の義務だと思いました」

事件発生から約6年後の1995年9月。堤さん、都子さんの遺体が発見された時、さちよさんは「対面することはできなかった」という。「見てしまったら、どうしたってその姿が焼き付いてしまう。生きていかなければならない私にそんな勇気はなかった」

96年、裁判が始まった。「自分がどんな精神状態になってしまうか不安」で、法廷に足を運ぶことはなかった。何が語られ、何が明らかになろうと、3人は戻ってこない。「つらくて、悲しくて、やりきれなくて、憤怒と憎しみの中にあり、気持ちのやりようもなく、それでも頭の中で、こらえて、こらえて生きてきました」

裁判開始から15年。坂本弁護士一家殺害事件で起訴された実行犯5人と首謀者の松本智津夫死刑囚。18日の中川被告の最高裁判決で、6人全員の死刑が確定することになり、同事件の裁判は終わった。

「死刑が執行されても、ただ、むなしいだけ」

10月中旬。さちよさんは漏らした。どんな判決が下されようと、事件から逃れることはできない。「私が息を引き取るまで(事件は)終わらない。いいえ、あの世まで持っていかなければと思っています」

事件を知らない世代は増えた。若い人は知る由もなく、それも仕方ないことと、さちよさんは言った。「それでも」と言葉を継いだ。「どこかで、誰かに、事件を記憶しておいてほしい」

考え続けたい。事件がなぜ起きたのか。被害者遺族がどんな思いで生きてきたのか。さちよさんが言った「生きている者の義務」として。

一連の刑事裁判は、21日に上告審判決予定の遠藤誠一被告(51)=一、二審死刑=を残すだけとなり、上告が棄却されれば事実上全て終結する。

中川被告の弁護側は刑事訴訟法に基づき、判決翌日から10日以内に手続きができる判決訂正の申し立てをする方針だが、量刑が覆った例はなく、退けられれば正式に確定となる。判決は一連の犯行を「教団の組織防衛を目的に、法治国家への挑戦として組織的、計画的に行われ、反社会的で人命軽視も甚だしい」と指摘。

「正当な職務上の活動をしていた弁護士を家族ごと殺害したり、殺傷能力の極めて高いサリンを散布したりするなど、残虐で非人道的な犯行態様と結果の重大性はほかに比べる例がない」と指弾し、「一連の犯行による被害者や遺族の被害感情も厳しい」とした。

その上で、被告自身の行為について「弁護士一家殺害では妻子の首を絞めて窒息死させ、両サリン事件でも共犯者の医療役やサリンの合成役として犯行に不可欠な役割を積極的に果たし刑事責任は重大だ」と判断。大半が松本死刑囚の指示に従った犯行だったことを考慮しても、死刑はやむを得ないと結論付けた。

一審東京地裁は2003年10月に求刑通り死刑を言い渡し、二審東京高裁は07年7月に控訴を棄却。被告側が上告した。

上告審で弁護側は「さまざまな異常体験をし、精神疾患が犯行に影響した」と完全責任能力を否定。松本、地下鉄両サリン事件については「実行の謀議に加わっていない」と主張していた。

一、二審判決によると、中川被告は1989~95年、松本死刑囚らと共謀。弁護士一家殺害や両サリンなど五つの事件で計24人を殺害、目黒公証役場事務長の監禁致死事件と併せ、25人の死亡に関与した。京都府立医大在学中の88年に入信。松本死刑囚の主治医だった。

◆坂本堤弁護士一家殺害事件 オウム真理教の信者脱会支援などに取り組んでいた坂本堤弁護士=当時(33)=、妻都子(さとこ)さん=同(29)=、長男龍彦ちゃん=同(1)=が1989年11月4日未明、横浜市磯子区の自宅アパートに押し入ったオウム真理教の教団幹部らに殺害された。5年10カ月後の95年9月、新潟県で堤さん、富山県で都子さん、長野県で龍彦ちゃんが、遺体で発見された。殺害は松本智津夫死刑囚(56)=教祖名麻原彰晃=の指示によるもので、松本死刑囚をはじめ、実行犯の早川紀代秀死刑囚(62)ら6人が殺人罪などに問われた。すでに5人の死刑は確定。中川智正被告(49)の上告審判決で同被告の死刑も確定する。

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