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村上春樹は「軽くない」 加藤典洋さんが語る読み解くヒント

社会 | 神奈川新聞 | 2017年2月24日(金) 13:16

 作家・村上春樹さん(68)の長編小説「騎士団長殺し」(新潮社)が24日、刊行された。ノーベル文学賞有力候補として世界的に注目されてきた村上さんだが、作品を「軽い」とする表層的な論評はいまだに多い。だが、本当に村上作品は「軽い」のか? 7年ぶりの複数巻にまたがる作品の刊行を機に、文芸評論家の加藤典洋さん(68)に、村上作品を読み解くヒントを聞いた。


加藤典洋さん=東京都内
加藤典洋さん=東京都内

漱石、太宰に並ぶ



 村上さんは、1979年、群像新人文学賞受賞作「風の歌を聴け」で小説家デビュー。同作と次作の「1973年のピンボール」が相次いで芥川賞候補作となるなど、話題を集めた。

 だが、意外にも、若手作家の登竜門である芥川賞は受賞していない。同賞の選考委員には、大江健三郎、井上靖、遠藤周作など戦後の日本文学を代表する作家が名を連ねていたが、「アメリカナイズされた新人」「受け身の作家」と目され、いずれの作品でも受賞を逃してきた。

 この様子は、「夏目漱石、太宰治にも当てはまる」と、加藤さんは言う。

 漱石は、当時主流だった文学者の世界に属さず、新聞連載にだけ小説を書く「変わり者」と評された。太宰も、「時の有力作家、川端康成、志賀直哉らとぶつかり、唯一の庇護(ひご)者が井伏鱒二で、芥川賞を受賞していない」。

 村上さんも、「芥川賞候補作以降、日本の文壇の流儀にうまくなじめず、マスコミや論壇に背を向け、外国で暮らし始めるなど、自ら孤立を選択した」。

 だが、“孤立”の道を歩んでも、87年の小説「ノルウェイの森」は爆発的にヒットし、「ハルキスト」と呼ばれる愛読者を生み出した。また、翻訳を通じて、村上さんの作品は世界規模に出版され、国境を超えた幅広い読者を得てきた。

 「広く新しい読者層を開拓した例として、吉本ばななもいるけれど、村上春樹の受容は群を抜いている」。明治期の夏目漱石、敗戦直後の太宰治、これに続くのが村上春樹。加藤さんは、近代文学の系譜に、村上さんをこう位置付けている。

二つの主題内在



 村上さんの作品には、二つの主題が内在すると加藤さんは指摘する。一つは、個々人の関係性を描く〈小さな主題〉。二つ目は

 
 

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