
県が2016年度の交付決定を留保し、17年度予算案に計上しなかった朝鮮学校の児童・生徒に対する学費補助を巡り、学校を運営する神奈川朝鮮学園の金鐘元理事長らが10日、県庁で会見し、「(留保は)補助制度の趣旨や法、条約に違反する。生徒の学ぶ権利を踏みにじる民族差別だ」などと訴え即時交付を求めた。
県は学校側が歴史教科書を改訂し、拉致問題を明記することを交付の前提条件としている。これに対し、金理事長らは▽教科書改訂が前提と約束した事実はない▽補助金は保護者に出されるもので、改訂が前提とされることは補助制度の趣旨に反する▽私学の教育内容への介入は私学教育法に反する-などと主張した。
金理事長は「教育内容を理由に朝鮮学校の児童・生徒だけが補助を受けられないことは受け入れがたい」と主張。会見に同席した3年生の男子生徒は「父母は支給されず、苦しく、悲しい表情をしている。そういう姿を見て悲しいし、憤りを感じている。人権を侵害している」と訴えた。
11年に朝鮮学校の歴史教科書から拉致問題の記述が削除されて以降、県は適正な記述を要請。だが、16年度中の教科書改訂も困難と判明したため同年度の補助金交付決定を留保。17年度予算案の計上も見送った。
黒岩祐治知事は同日、取材に対し「教科書改訂されておらず前提が崩れた。県民の理解を得られない。改訂されればすぐに出す」とこれまでの主張を繰り返した。