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ヘイトスピーチ考
時代の正体〈384〉国に先んじ差別を禁止 条例はなぜ必要か(下)

社会 | 神奈川新聞 | 2016年8月31日(水) 17:30

京都で制定を目指す市民条例案を説明する金さん=22日、川崎市労連会館
京都で制定を目指す市民条例案を説明する金さん=22日、川崎市労連会館

 龍谷大法科大学院教授の金(キム)尚均(サンギュン)さんらが制定を求める条例はヘイトスピーチに限らず人種差別全般を禁止する内容で、国に求められている法整備を先取りするものだ。金さんは「ヘイトスピーチは差別の一現象にすぎず、差別のおおもとから禁止する必要がある」と語る。

 大学教授や弁護士らでつくる「京都府・京都市に有効なヘイトスピーチ対策の推進を求める会」が市民条例案「京都府(市)の人種差別撤廃に関する条例」を発表したのはことし3月。その前文は高らかにうたう。

 〈京都府・京都市は、マイノリティ(少数者)を排斥、攻撃しようとする活動に対して、毅然(きぜん)とした態度で立ち向かわなければならない。人種差別は、マイノリティへの悪意を社会に充満させ、マイノリティへの暴力へと導く行為であり、平等・平和・友好をめざす社会を破壊する点で社会的に不正かつ危険であることを認識し、これを克服することに取り組む必要がある〉
 ヘイトスピーチを巡っては大阪市が7月に抑止するための対策条例を全国で初めて施行させているが、金さんたちが京都府と京都市に提起しているのは「人間の尊厳と法の下の平等の侵害を許さない社会の構築を図り、もって人種差別による被害とそれによる社会的排除をなくすることを目的とする」(第1条)もので、人種差別全般を禁止する条項が盛り込まれている。

 「ヘイトスピーチは差別意識が蔓延(まんえん)する中で行われる現象にすぎない。おおもとの差別的取り扱いや差別的制度からなくしていくべきで、ヘイトスピーチだけが対象では、差別の実態を十分に包括したものとはいえない」と金さんは説明する。

 ヘイトスピーチは表現行為によってなされる差別であり、差別の一形態にすぎない。日本が加入する人種差別撤廃条約も包括的な差別禁止基本法制を設けた上で、さまざまな差別の中で差別を扇動するというより害悪の大きいヘイトスピーチについては刑事罰でもって規制すべきだという考えに立つ。その意味でヘイトスピーチ解消法も条約の要請に完全に応えているものとはいえず、国のさらなる法整備を後押しするためにも、自治体には解消法の趣旨を踏まえた上で、より踏み込んだ取り組みが求められている。

進取の精神


 京都の市民条例案は目的を規定した第1条で、その進取の精神を示す。人種差別撤廃条約、自由権規約という国際条約と憲法13条、14条を具体化させるものという位置付けを明記し、人種差別の防止についての府市と府市民の責務を明らかにするとしている。

 人種差別撤廃条約は差別を禁止し、終了させる義務を締約国に課しており、自由権規約も差別の禁止をうたう。憲法13条は個人の尊重、14条は法の下の平等を規定するものだ。条例案第3条の「人種差別行為の禁止」では、これらを根拠にした上で、禁止行為として、属性を理由にした差別的取り扱い、嫌がらせなどの差別的言動、そして公然と差別的言動を行うヘイトスピーチを挙げている。

 第2章「人種差別撤廃のための施策」では具体策を列挙している。

 啓発や知識の普及▽交流の推進や共同学習▽差別防止のための地域住民や市民団体の取り組みの支援▽相談体制の整備▽相談者への助言や情報提供などの支援▽再発・拡大防止のための勧告や禁止行為者の氏名・団体名公表-などで、このうち京都らしさは訴訟費用の無利子貸し付け、返還の免除という支援策。京都朝鮮学校襲撃事件の民事訴訟では2010年6月の提訴から判決確定まで4年半の歳月を要し、金さんは「弁護士のボランティア精神に支えられたが、それでも訴訟費用は悩ましい問題だった」と話す。

行政の責務



 最終第3章では、首長の付属機関、人種等差別防止対策委員会の設置を規定する。禁止行為に当たるかどうかの調査審議を行い、支援や再発防止の措置を取る際に首長はその意見を聴くことができる。禁止行為者に意見表明の機会を与えるなど行政権の乱用、独善を防ぐための仕組みとなっている。このほか、

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