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共感の旅~次世代につなぐ~(上) 歴史を直視、克服と和解誓う

社会 | 神奈川新聞 | 2016年8月14日(日) 10:03

 川崎市と韓国・富川(プチョン)市の友好都市協定締結から20周年を迎えた今夏、訪韓した市民訪問団に同行し、地道に重ねられてきた交流の今を見詰めた。良き隣人として違いを学び合い、課題を共有し、国家間の歴史問題からも逃げない。草の根の市民の強い意志は、若い世代の胸にも芽吹いていた。

草の根 強き意志貫く


 「今、日韓の関係はそれほどいい状況ではない。日本ではヘイトスピーチ(差別扇動表現)が問題になっているし、今年になっても従軍慰安婦の問題を巡り、おかしいやり方でその問題を終えようとしている。両国間には依然として緊張が走っている」

 富川側の市民交流会共同代表、李(イ)時載(シジェ)教授はあいさつの中でそう指摘した。川崎側の市民交流会と誓い合った、「過去のすべての歴史を直視し、克服と和解の重要性への認識を土台にした交流」を進めてきたからこそ、発せられた率直な言葉だった。


全日程で通訳と案内役を務めた、南さんと鈴木さん夫妻
全日程で通訳と案内役を務めた、南さんと鈴木さん夫妻


 在日コリアンの集住地域にある川崎市川崎区の桜本商店街と、富川の遠美(ウォンミ)市場の交流をきっかけに市民交流が始まったのは1991年。5年後に両市で友好都市協定が結ばれたが、国同士の関係が悪化した時期は何度となくあった。それでも高校生がつづった文章には「そうした時期だからこそ頑張るんだ」と書かれていると、李教授は続ける。「市民交流を、国家間の関係を変えていく元にしたい」

 両市民の交流の窓口になっている「川崎・富川市民交流会」の訪問団は、7月21日から5日間、富川を訪れた。20周年記念行事に参加するため、川崎からは福田紀彦市長を含む11団体、約200人がほぼ同時期に訪韓。初日の21日は両市長による交流推進確認書の調印式が行われ、その後両市の市民交流会が合流した。

 「私が韓国語を、鈴木裕子が日本語を担当します」。全体の進行役と通訳として、ある夫妻が前に立った。両市の高校生が交流する「川崎・富川高校生フォーラム・ハナ」で出会い、昨年結婚式を挙げた川崎出身の鈴木裕子さん(33)と富川の南(ナム)佑炫(ウヒョン)さん(31)。現在はハナの卒業生として富川側の市民交流会に加わり、大人同士の交流も支えている。今回の訪問では、2人が全日程で通訳や案内役を務めた。

 富川側は発足当初からのメンバーのほか、ハナに参加している高校生や卒業生らも集まった。川崎側も交流会メンバーだけでなく、学者や弁護士、他県の市議ら交流に関心のある人や、富川市に交換派遣された経験のある川崎市職員ら約20人が訪問団に参加していた。

共有



 一人一人、自己紹介していく。進行役の南さんは呼び掛けた。「交流というのはお互いにあいさつして、顔を見て、名前を覚えようとすることだと思う。お互いに紹介した名前と顔をもう一度見詰め合いながら、こんな素晴らしいところに一緒にいるんだと考えてほしい」

 韓国の人、日本の人ではない。名前があり、それぞれの思いがある個人として知り合い、友人となる。「経験、時代、世代の差があっても、交流への気持ちは変わらない。一人一人をよく知ってほしい」。それが高校時代から交流を続けてきた夫妻の思いだった。


再会した川崎側と富川側の市民交流会メンバーら=7月21日、韓国・富川市
再会した川崎側と富川側の市民交流会メンバーら=7月21日、韓国・富川市


 李教授はあいさつで強調した。「友情や理解を積み重ねていくことで国境を超えた価値や視点が生まれる。実際、両市の市民は互いの違いを認めているが、共有しているところも多い」

 自治制度の歴史が浅かった富川市は、川崎市の先進的な政策を多く学んできた。2000年以降は、韓国の多文化政策を学ぼうと、川崎から富川を訪れる人も増えた。

 互いに学び合いながら、課題を共有していく。李教授はそこに市民交流の意義を見いだす。「私は数年前から交流を共有へと発展させていかなければと思っている。共有すべきものの中にはわれわれが目指す民主、自由、人権が含まれる。両市の交流、市民間の連帯が日韓や東アジア全体にも影響を与えられれば」

 川崎側の市民交流会共同代表で在日コリアン2世、裵(ペ)重度(ジュンド)さん(72)も、南さん夫妻の横であいさつを返した。「よき隣人を得る中で育ってきた関係を、若い世代がつないでいく交流のありようは素晴らしい」

 韓国でも知られている日本のヘイトスピーチについて、事務局長の山田貴夫さん(67)が国内や川崎の状況、課題を報告した。高校生フォーラムの卒業生、金(キム)永俊(ヨンジュン)さん(33)は関心のある一人として口にした。「川崎に在日コリアンが多いことは知っている。深くは理解できていないが、ヘイトスピーチのことはテレビや記事で何度も目にした。人の存在そのものを否定することは正しくないと思う」

普遍



 この日は、両市の小学生の絵を飾る「子ども美術交流展」記念式も開かれた。1996年から始まった大人の作家同士の交流をきっかけにスタートし、3年前からは相互の家庭でホームステイも行っている。今回は川崎市立古市場小学校(同市幸区)の児童と卒業した中学生計6人が訪韓し、富川の小学生の家庭に滞在した。夜には、市役所前の広場で開かれた国際映画祭のオープニングセレモニーにも参加。映像文化に力を入れているところは、川崎と富川の共通点でもある。

 両市の交流を通じ、南さんは日本以外の、

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