広島、長崎へ原爆が投下されて71年、被爆者や若い世代が「核兵器禁止条約」の締結に向け、初めて国際的な署名活動を展開しようと動き始めている。「ヒバクシャ国際署名」。これまで連携してこなかった団体や組織が賛同を表明している。2020年まで毎年、国連総会に署名を届け、計数億筆の署名を目標にする。キャンペーンリーダーを務める大学院生の林田光弘さん(24)=横浜市=は「さまざまな主義主張の団体が初めて連携し、核兵器禁止を訴える行動こそが尊い。過程も大事にしたい」と話している。
6日に広島、8日に長崎でスピーチした長崎出身の林田さんは、自身も被爆3世。高校生のときは非政府組織(NGO)の「高校生平和大使」として、核拡散防止条約(NPT)再検討会議へ参加、15年も同会議へ参加している。
「被爆者の平均年齢は80歳を超え、語り部たちが次々と亡くなり、伝えていく難しさに直面している。今回の署名活動を通じ、核兵器禁止条約締結に向けた大きな動きにしていきたい」と話す。
被爆者たちによる日本原水爆被害者団体協議会(被団協)が昨年11月ごろから検討を始め、国内外の平和団体や組織が連携していった。
最大の特徴は、政党や労働団体との関係が深く、一緒に行動してこなかった組織も名を連ねていることだ。原水爆禁止日本国民会議(原水禁)や、原水爆禁止日本協議会(原水協)のほか、全国地域婦人団体連絡協議会、新日本婦人の会、全国労働組合総連合、ピースボート。さらに、創価学会平和委員会や、世界宗教者平和会議日本委員会といった宗教関係に加え、日本生活協同組合連合会(日本生協連)なども肩を並べ、かつてない取り組みへと発展している。
行動は、各団体がそれぞれ署名を集める方式で展開、被団協へ署名を集約する仕組みにしている。
核兵器の保有や使用を禁止する核兵器禁止条約は、世界的では約150カ国が賛同しているという。だが、日本を含め国連で発言力のある大国の大半は賛同していない。「いいかげん核兵器をなくそうよ、と世界は思っている。唯一の被爆国である日本でさえ政府としては核兵器禁止の姿勢を示そうとしない」
だからこそ林田さんは言う。「日本政府と日本人の意見は決して同じではないというメッセージを日本から発することに今回の『世界署名』の意味がある。世界的に声を大きくすることで、国内外から圧力をかけたい」
当面は、賛同団体を増やすとともに著名人ら個人にも呼び掛けていく考えだ。