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ご心労に住民ら理解、県内ゆかり葉山など
重い務め思いはせ 陛下「お気持ち」表明

社会 | 神奈川新聞 | 2016年8月9日(火) 10:01

「こどもの国」の開園50周年記念式典出席後、園内の牛舎を視察される天皇、皇后両陛下=2015年5月28日午後、横浜市(代表撮影)
「こどもの国」の開園50周年記念式典出席後、園内の牛舎を視察される天皇、皇后両陛下=2015年5月28日午後、横浜市(代表撮影)

 象徴としての務めが安定的に続くように-。天皇陛下は8日、約11分のビデオメッセージに「お気持ち」を託された。即位から28年。被災地訪問や慰霊の旅を重ね82歳になった陛下の言葉には、生前退位の意向が強くにじんだ。県内の「こどもの国」や「葉山御用邸」をはじめとする皇室ゆかりの地では、陛下の心中をおもんぱかり、好意的に受け止める声が相次いだ。 
 
 「行事などでお姿を拝見するたびに、国民を思うお気持ちに頭の下がる思いだった」

 天皇、皇后両陛下の結婚を記念して建設された横浜市青葉区の「こどもの国」の三国治園長(60)は、同園を訪れた際に見せられる穏やかな笑顔を振り返る。

 昨年5月、開園50周年記念式典後に牧場の視察へ向かう園内バスに同乗した。沿道の人たちに応えていた両陛下は反対側の座席にまで移動し、陛下は立ったまま、皇后さまは窓際の席に座って手を振られていた。

 大雪に見舞われた2013年1月14日には、玉川大学(東京都町田市)から帰京する際にこどもの国前を通過。冷たい風や雪が吹きすさぶ中でも車の窓を開け、身を乗り出して沿道に手を振られていたという。

 「あの風雪の中で窓を開けられていたことに驚いた」と話す三国園長は、8日の「お気持ち」の表明を聞き、思いやった。

 「ご自分のお年や健康状態、ご公務について、ここまで率直に話されたことに驚いた。陛下のお気持ちに沿った形で道筋がついていけばいいと思いますし、今後も健やかにお過ごしになるようお祈りしたい」

 葉山御用邸のある葉山町では、「お気持ち」に理解を示す声が広がった。

 神妙な顔つきでテレビを見つめた主婦(69)は「もう少しはっきりと言いたい本音はあるのかもしれない」と、直接的な表現を避けた陛下の心中をおもんぱかった。また「天皇の終焉(しゅうえん)」について触れ、家族や関係者が置かれる状況に言及したことには、「周囲に気を配っていらっしゃる。そこまで考えた末の生前退位なのだと思う」と話した。

 御用邸近くで商店を営む角田玲子さん(79)は「私ももうすぐ80。若いころはすぐできたことが時間がかかってしまう。全力で取り組まれているからこそ、『重い務め』なのだろう」と話し、陛下のお気持ちに共感を寄せた。

「ゆっくり休んで」と気遣う



被災者や戦災関係者ら
 陛下は「平成」に入って相次いだ大震災の被災地を常に気に掛け、被災者に直接励ましの言葉を掛けてきた。

 阪神大震災に見舞われた神戸市。2001年に陛下と面会したという長田区の酒店経営戸田一弘さん(79)は「元気な間に引退し、ゆっくり休んでもらいたい」とねぎらう。東京電力福島第1原発事故で福島県葛尾村から避難し、仮設住宅で食堂を営む石井一夫さん(60)は体調を気遣いつつ「離れていても、福島のことをずっと心の中に置いておいて」と訴えた。

 天皇、皇后両陛下が昨年訪問した宮城県蔵王町の北原尾地区。戦時中、日本統治下にあったパラオからの帰還者が多く住んでいる。陛下にねぎらいの言葉を掛けられたという佐崎美加子さん(84)は「なるべく多くの国民に寄り添ってほしい」と話す。一方で「そう望むと(陛下の)負担は重くなる」と複雑な思いもにじませた。

 太平洋戦争末期の沖縄戦で親類13人を失い、語り部として活動する那覇市の大西正子さん(84)は「病気を経験して体力の衰えを心配するのは同世代として理解できる」。1995年、原爆資料館館長として館内を案内した被爆者の原田浩さん(77)=広島市=は「お気持ちに沿って法改正などの努力が続けられてほしい」と願った。

 陛下の同級生真田尚裕さん(83)=鎌倉市=は「陛下は責任感の強い真面目な性格。体の衰えを感じ、公務に全力投球できなくなる中で、これまでずっと悩み続けてきたのではないか」とおもんぱかった。

 
 

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