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殺人か事故か シッター事件 20日判決

社会 | 神奈川新聞 | 2016年7月18日(月) 11:39

横浜地裁
横浜地裁

 ベビーシッターとして預かっていた複数の子どもにわいせつな行為を繰り返した上、横浜市磯子区の男児=当時(2)=を窒息死させるなどしたとして、殺人や強制わいせつなどの罪に問われた男(28)の裁判員裁判の判決が20日、横浜地裁で言い渡される。検察側は「改善、更生は絶望的」として無期懲役を求刑、弁護側は男児の死亡は過失による事故と反論しており、裁判員らの判断が注目される。

 検察側は、男児の鼻や口付近に強く押さえられたような痕があったことから、死因は窒息死と断定。わいせつ事件については、精神科医の鑑定に基づき被告を「小児性愛者」とし、「子どもを性的欲求の対象にしていた」と訴えた。

 論告では「子どもの預け先に困った親の弱みにつけ込み、シッターの立場を悪用してわいせつな行為を繰り返していた」と非難。「無限の未来がある命を奪った結果は重大。性犯罪の被害児童も延べ25人に及ぶ」として、無期懲役を求刑した。

 弁護側は弁論で、被告には男児を殺害する動機がないとし、「男児は浴槽内で目を離した際に溺れた」との供述を踏まえて業務上過失致死罪にとどまると主張。わいせつな行為や裸の撮影を繰り返したとされることについては、「中学時代に同級生から性的ないじめを受けたトラウマ(心的外傷)がフラッシュバックしたためで、性的意図はなかった」とし、懲役7年を求めている。

ずさん保育次々と 質の担保なお課題




 14回にわたる公判では、被告(28)によるずさんな保育の実態が次々と明らかになった。今回の事件を機に国はベビーシッター業への規制を強化し、都道府県への届け出を義務化。だが、自治体側に具体的な監督基準はなく、公的な資格がなくても開業できるシッターの質をどう担保するかは、なお課題が残ったままだ。

 公判での説明によると、被告がシッターを始めた経緯はこうだ。中学を卒業して調理の専門学校に通った後、給食センターや運送会社で働いたが、人間関係などの問題で長続きしなかった。派遣で子どもの面倒を見る仕事を経験し、「子ども相手に働くのが自分に合っていると思った」という。

 2012年3月ごろに横浜市内の保育園で働くようになり、同10月ごろには並行して個人シッターを開業。保育士資格はなく、未婚で子育て経験もなかったが、独自に開設したインターネットのサイトで「2人の子どもがいる父親」と自己紹介し、信じて預ける保護者も少なくなかった。被告はうそのプロフィルを掲載した理由を「集客のためで、悪いこととは考えなかった」と弁明した。

 逮捕までの約1年半の間に預かったのは、0歳から小学校6年生までの延べ300人以上。最大で7~8人を同時に預かることもあり、多いときは月80万円を売り上げたという。

 ただ、被告の母親は「息子は一つのことに集中すると周りが見えなくなる性格。小さい子にけがをさせるのでは、と心配していた」と証言。実際、子どもを預かりながら事務作業をしたり、おむつを替えなかったりしており、被告と一緒に過ごすのを嫌がる子どももいたという。

 14年1月には、預かった3歳の子どもがコードでつまずき、ポットの熱湯がこぼれて背中に大やけどを負う事故が発生。それでもシッターを続け、2カ月後に横浜市磯子区の男児が亡くなる事件が起きた。

 事件を受け、国は今年4月から個人を含めたすべてのシッター事業者に対し、児童福祉法に基づき居住する都道府県などへの届け出を義務付けた。違反した場合は50万円以下の過料が設けられ、横浜市では4月の1カ月間で16件の届け出があったという。

 自治体がシッターに関与する仕組みはできたが、質を確保するための具体的な監督基準については示されていない。横浜市の担当者は、6人以上を預かる認可外保育施設に年1回の立ち入り調査を実施していることを踏まえ、「自治体として認可外に準じた形で指導監督できるよう検討していきたい」としている。

 
 

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