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時代の正体〈358〉共闘の明暗(下)市民の闘い託す希望

社会 | 神奈川新聞 | 2016年7月15日(金) 12:06

カラフルなプラカードを掲げ開票速報を見る浅賀氏の応援に駆け付けた支援者たち。野党共闘による統一候補の当選確実が報じられるたびに喝采に沸いた=11日午前0時すぎ、横浜市内
カラフルなプラカードを掲げ開票速報を見る浅賀氏の応援に駆け付けた支援者たち。野党共闘による統一候補の当選確実が報じられるたびに喝采に沸いた=11日午前0時すぎ、横浜市内

 安全保障関連法に抗議するため昨夏、国会前で声を上げ続けてきたSEALDs(シールズ)。その創設メンバーの1人で、大学院生の林田光弘さん(24)=横浜市=は参院選の野党候補応援に奔走していた。あの夏、国会前で舌鋒(ぜっぽう)鋭く放った「野党は共闘」を名実のものとすべく-。

 全国各地で発足していた市民団体を結び付け、市民と候補者をつなぎ、時には弁士としてマイクを握った。

 自身も初めての選挙戦。政治の舞台裏へ入り込み、知った。各候補者の選挙対策本部、後援会、支援者団体。それぞれ思惑が絡み合い、市民を受け入れる体制が整っているとは到底言い難い硬直化した体質があった。

 「市民が何かできることはないか、と選挙事務所を訪ねても『街宣の時に来てくれればいい』と言われる。あるいは、ポカンとされ『いや特にない』と苦笑いされる」。愕然(がくぜん)とした。

 つまり市民の側だけでなく、候補者の側も「市民の選挙」について素人だったのだ。

◇  ◇
 全国32の「1人区」で野党統一候補の絞り込みが進む中で、その思いは一層強くなっていった。「野党共闘の機運は市民が盛り上げたことによる成果の一つ。だけど、いざ選挙戦になれば野党共闘だけじゃ勝てない。市民が主体的に選挙に関わる動きが必要になる。それこそが与党の持ち合わせていない力だから。いままで市民の選挙活動って『投票に行こう』とか『街宣を聞きに行こう』くらいしかなかった。それじゃ全然足りない」

 市民が自ら考え、勝手に動く、自由に動く。その姿がさらに自ら動く市民を生む。目指していたのはその連鎖だった。


参院選で「主体的な市民が生まれた」とみる林田さん
参院選で「主体的な市民が生まれた」とみる林田さん



 林田さんは7月から神奈川選挙区へ入り、民進党公認の真山勇一氏と、共産党公認の浅賀由香氏、双方の応援に加わった。

 当落線上に立つであろう2人。あと一押しが必要な候補だった。

 共産党という看板への抵抗感はかつてはあった。「だけどそれも深い考えがあってのことではない」。単なる印象。ステレオタイプだったと思い返す。「話を聞いて考えれば分かる。今の共産党が共産主義革命を目指しているとか、そんな共産議員はいない。むしろ、参院選で結果的に1人区で11議席を獲得できたのは、共産党の英断によって統一候補の調整ができたからだ」。“共産アレルギー”は霧散していた。

◇  ◇
 「人にものを伝える、ってことを真剣に考えれば分かる。例えば、モノクロで主張を一方的に書き殴ったようなビラ、渡されて読みますか?」

 シールズの前身、特定秘密保護法に反対する学生団体「SASPL」(サスプル)が発足した2012年12月から渋谷や官邸前でデモを繰り返してきた。

 「デモも同じ。許さない!とか、撤回せよ!とか怒鳴り散らされても共感は生まれない。だから僕らは『一緒にやろうよ!』と演出し、音楽をかけて呼び掛けた」。共感が共感を呼び昨夏に国会前を十数万人が埋め尽くした。

 地方都市の駅前にかつてないほどの人を集め街宣すれば見た人は驚く。「一体何が起きているのかと関心を持ち、立ち止まってもらえる。市民が候補者を囲む状況をつくることで『この候補は市民が推しているんだ』というイメージで訴え掛ける。そうしたアイデアが必要だった」

 インターネットの活用も同じだった。会員制交流サイト(SNS)で市民が自主的に野党を応援するチラシを作って公開していたら、候補者の公式アカウントから「いいね」とコメントを付ける。自由なアイデアを後押しすることによって、決して選対内部からは出てこないような若い感性に訴えるデザインが無数に生まれる。

 浅賀氏の陣営は、そうした多様なプラカードを掲げ選挙戦を戦った。

◇  ◇
 だが結果をみれば、神奈川選挙区の現実は、惨敗そのものだ。4議席のうち野党は真山氏の1議席のみ。浅賀氏は5番手とはいえ、トップ当選した自民党公認の三原じゅん子氏と比べればダブルスコア。数字だけ見れば希望は見いだしにくい。

 野党候補が4人立ち、野党共闘を呼び掛けた市民も投票先を巡り分散した。主義主張を超え、最も当選に近い候補を推す「戦略的投票」が奏功しない構図となっていた。

 林田さんは「1人区では統一候補の絞り込みが実現したが、複数区では全く手が回らなかった」と振り返る。「結果論だが、例えば民進党の金子洋一氏と浅賀氏が立候補の段階で一本化できていれば、4番手で当選した自民党推薦(9日付公認)の中西健治氏をダブルスコアで抜くことができた。もちろん簡単ではない。だが、既に全国32の選挙区では、かつてあり得ないとされてきたことが実現している。無理だと諦めている場合ではない。複数区でも可能性はゼロじゃない」と、次を見据える。

◇  ◇
 参院選後、共産党の志位和夫委員長と、民進党の岡田克也代表がそろって「市民と一体となった選挙ができた」と振り返った。

 印象的な言葉だった。「組織力に加え、普通の市民が市民を動かすことが今回初めてできたということ。これは日本の選挙文化の中で初めてではないだろうか」

 そこに林田さんは長期的な視点から見た社会的な価値を感じていた。「きっとこれは、民主主義のプロセスなんだと思う。『選挙に行く』から『選挙に関わる』という変化。代表制民主主義とはつまり『私は仕事があるから立候補できない、だからあなたに議員になってもらいたい』が原点。利害関係を抜きに自分のやってもらいたい政策をやってくれる候補者を推すということ。今回の参院選でそうした市民が少なからず生まれた」

 誰に頼まれたわけでもない。個々が自らの思考に基づき行動する健全な民主主義社会を維持していく上で必要な要素を、林田さんは感じ取っていた。「だから負けたとしても人のせいにしない。善戦できたのは俺のおかげと思える。一方で反省も主体的にできる」

 その反省もまた具体的かつ前向きだ。「野党共闘のありようはさらに深められるはずだ。例えば共産党と民進党で、

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