22日公示の参院選神奈川選挙区(改選定数4)で、市民と野党の“共闘”が実現する。先ごろ、県内の市民勝手連が求める政策要望書に、民進、共産、社民、生活の党の立候補予定者らが署名。「市民の声を政治に反映させる」という約束の下、野党4党と手を携えた。「市民が変える。選挙を変える」というキャッチフレーズの下、「選挙の主役は市民」の思いは通じるか。
カラフルなのぼり旗が風に揺れていた。
「動きだそう!かながわ 選挙に行こうよ、街頭演説会」。白地の横断幕にピンク色の文字が踊る。19日、横浜駅西口前の広場。買い物客らでにぎわう中、市民勝手連「ミナカナ」(みんな、かながわ)世話人の石井麻美さん(47)はマイクを握った。
「市民の1人として、選挙に関わりたい、政治に意見を反映させたいと街中で声を上げています。こんな私たち市民の声を政党も無視できなくなっています」
この日、市民が企画した街頭演説会に、野党4党の立候補予定者らが姿を見せた。
「市民連合横浜☆ミナカナ」の小川道雄さん(70)は「市民と複数の政党が手を携え、選挙を闘う。かつて、こんなことがあっただろうか」と、チラシをまきながら、うれしそうだった。
「ミナカナ」出発
話は半年前にさかのぼる。昨年12月3日。冷たい師走の雨が降る中、横浜・みなとみらい21(MM21)地区にある商業施設の大ホールに市民115人が集まった。「ミナカナ」の発足式だった。
学者らに憲法違反と指摘された安全保障関連法の成立後、安倍政権への危機感を強めた市民らはデモやイベントを通じ、さらに連携を深めた。この場で話題になったのは参院選。ミナカナ世話人の1人、武井由起子さん(48)は打ち明ける。
「はっきり言って、どの政党もあまり好きじゃない。でも、私たちの声を聞いてくれる政党に1票を入れないと、今後も政府・与党の力で市民が望まない法案を通されてしまう」
これまで政治の世界とは無縁だった市民が次々と共感の声を上げ、3月以降、横浜、川崎、湘南、相模原と県内各地で計八つの市民勝手連が生まれた。
難しい市民共闘
だが、予想以上の困難が続いた。
湘南地域の「@湘南市民連絡会」の飯田能生さん(54)は言う。「野党共闘の前に市民の共闘が難しかった」。もともと多様な市民の集まり。支持政党も異なり、選挙との向き合い方でも考えは違った。
「例えば、改選定数4に対し、野党で3議席獲得を狙うのか、最低でも2議席を保持するのか、という議論があった」。年明け以降、全国では32の「1人区」で統一候補の調整が進んでいた。「複数区」の神奈川ではそれも難しい。
定数4に対し、立候補を表明している候補者は12人。市民勝手連が応援する民進、共産、社民からは計4人が出馬する予定だ。最終的にどの候補者に投票するかは、有権者一人一人に委ねられる。
小川さんは「もう少し、候補者を絞れなかったのかというジレンマが消えたわけではない」と話す。
今月16日、市民勝手連の政策要望書に野党4党の立候補予定者らが署名した際、飯田さんは「候補者調整を野党間で話し合えないか、ぎりぎりまで各党に打診していた」と明かした。しかし、大票田の神奈川では比例票を掘り起こしたい政党の思惑もあって、かなわなかった。