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「国民怒りの声」小林節代表
時代の正体〈339〉憲法学者立つ(上) 社会に役立ってこそ学問

社会 | 神奈川新聞 | 2016年6月20日(月) 11:43

立候補予定者を発表した会見が終わり、記者の質問に答える小林節さん=17日、都内
立候補予定者を発表した会見が終わり、記者の質問に答える小林節さん=17日、都内

 怒れる憲法学者、小林節さん(67)=横浜市港北区=が立ち上げた政治団体は、その名も「国民怒りの声」。参院選の出馬を決め、自身を含め比例代表に10人、東京選挙区に1人の候補者を立てる。野党共闘の旗振り役となってきたその人の転身は驚きをもって受け止められた。「私は孤立を恐れない」。異端の矜持(きょうじ)がある。

 5月14日、都内のホールに50人以上の報道陣が主役の登場を待ち構えていた。船出となる設立報告会は開始30分前から支援者が席を埋め始め、立ち見も出る盛況ぶりをみせていた。

 7台のテレビカメラの前を、フラッシュを浴びながら現れた司会者が頭を下げた。「小林節代表は先約の講演会があるため、本日は欠席です。申し訳ありません」。会場から一斉に「えーっ」「なんで」の声。構わず司会者は「まずは代表の説明をお聞きください」と続け、ビデオメッセージが流された。

 小林さんは、設立の狙いや立候補に至った思いを16分間語り、こう結んだ。「大事な最初の集会に代表がいないというぶざまな状態。申し訳ない」

 10日後の24日。事務所のお披露目会で小林さんは支援者に謝罪した。「先約を破るのはおかしいと思った」。設立報告会を設定した日には和歌山市で講演の予定が入っていた。担当者が確認せずに日時を設定してしまったが、政治団体を立ち上げることになったと告げれば、断られると踏んでいた。「ところが、それでもぜひ来てほしいと言われた」。支援者から「普通の感覚なら先約を守るよ」と共感が示され、場が和んだ。小林さんは「目標は既存政治からの脱却。庶民の感覚を大切にするなら、講演会という先約を破ることはできなかった」と話した。

 この日、集まった記者たちを前にいつになくしみじみとした調子で語った。

 「このままでは野党の敗北が目に見えている。何もせずにいれば、共産党は少し増えても残る野党はこれまで通りになるだろう。安倍政権が続き、いずれ国会で3分の2を取り、憲法を変えてしまう。私には失うものがない。自分が立候補する以外に選択肢がなかった」

 憲法をないがしろにする安倍政権打倒のため、全国32の「1人区」で野党候補の一本化を説いて回った。「北海道から沖縄までを3周した」。それでも不十分と、野党が比例代表に統一候補を立てる「統一名簿方式」を提唱した。しかし足並みはそろわなかった。

 「公明党支持者は自民党の候補のために電話をかけ、投票所へ行く。そこまでやらなければ勝てない。野党は統一名簿によって共闘の本気度を示すべきだった。そうすれば無党派層にも政治が変わるかもしれないという期待感を持ってもらえたのに」

孤独


 若き日の慶応大教授時代、憲法9条改正の必要性を唱えると自民党議員の会合に呼ばれるようになった。小林さんは「いたのは世襲の2、3世議員ばかり。自分たちこそが権力だと勘違いし、自分たちに国民が従うのは当たり前だと思っていた。憲法が権力者を縛るためにあるという立憲主義の考えが欠如していた」と振り返る。

 安倍政権が憲法改正の発議要件を緩和するために、憲法96条に手を付けようとするや「裏口入学」と痛烈に批判。憲法解釈の変更で集団的自衛権行使容認に踏み切ると「憲法泥棒」と再び斬ってみせた。二度と自民から声が掛かることはなかった。

 昨年6月の衆院憲法審査会では2人の憲法学者とそろって「法案は違憲」と断じ、国会前で抗議活動が広がるきっかけになった。

 今回の出馬には野党からも冷ややかな目が向けられる。「参院選直前に野党をつくっても野党同士で票を奪い合うだけ」「自民党を利することになる」。記者会見でも同じことを何度も聞かれた。

 「言いたいのは、野党の票を奪うつもりはないということ。共産支持者は共産、民進支持者は民進、社民は社民にそれぞれ投票してほしい。私はこれまで棄権してきた人を投票所に向かわせたいと思っている。強い組織票を持つ自民、公明に勝つには野党全体の票を増やさねばならない。繰り返し言っているが、なかなか分かってもらえない」

 「晩節を汚すから、やめておけ」と忠告されたこともある。落選を前提にした物言いがさみしい。

 「私は生まれたときから、左手の指がない。子どものころからのけ者にされ、常に孤立してきた。だからだろうか、私は孤立を恐れない」
 

真意


 安倍首相は圧倒的多数の憲法学者の「憲法違反」という指摘をよそに安全保障関連法の成立に突き進んだ。

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