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県議会考
時代の正体〈338〉代表質問制限問題(下) 多様な意見反映から逸脱

社会 | 神奈川新聞 | 2016年6月19日(日) 10:36

代表質問の制限を巡り深夜に及んだ議運委=5月12日午前1時半ごろ、県議会
代表質問の制限を巡り深夜に及んだ議運委=5月12日午前1時半ごろ、県議会

 共産党県議団に「猛省」を求める決議を行った県議会の一連の問題。共産に代表質問を行わせないことが検討されたことを含め、山梨学院大法学部の江藤俊昭教授(地域政治論)は「『多様な意見の反映』という議会の最も根源的な原則を逸脱してはならない」と問題視し、改革の契機にすべきだと指摘する。
 「私からすると、今回の問題は不思議でしょうがない。神奈川県議会は改革に熱心で、都道府県レベルでは先進的な議会なんですから」。江藤教授は開口一番、率直な感想を口にした。

■ ■ ■

 引き合いに出すのは、県議会で最も重要なよりどころとなる県議会基本条例。県議会は2008年12月、都道府県レベルでは早い段階に制定し、議会のあり方や議員の役割などを明確に位置づけた。

 条例制定に向けた検討が進められていた当時、参考人として県議会に招かれ、骨子案に対する意見も述べた江藤教授は「改革、改革」と熱心に取り組んでいた県議らの顔が今も浮かぶという。

 「『改革することが県民のためになる』として、早い時期から議会基本条例をつくったのが神奈川。珍しい規定も思い切って入れている」。例えば15条。知事ら執行機関に議会への説明や議会がチェックしてきたことを重視させる規定で、二元代表制の一翼を担う議会として、行政が一人歩きしないよう縛りをかけている。「ほかにも議会の透明性を増すことや、報酬を含めて議論を重ねてきた議会だった」

 だからこそ、今回の問題には首をかしげる。「条例の理念とは全く違うことが行われている」

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 今回の決議は、相次ぐミスなどで議会運営に停滞や混乱を引き起こしたとして共産に「猛省」を求める内容だ。県議会では特定会派に対する決議は過去に例がなく、極めて異例だ。

 この決議をどう見るか。「まず、決議というのは議会としての機関意思を示すもので、非常に重い。だからこそ、今回のように特定の会派を萎縮させることを決議で行うのはかなり問題だ」

 実現には至らなかったものの、検討された代表質問の制限についても「絶対にやってはならないことだ」と問題視する。議会基本条例3条は議員の使命を「県民の多様な意見を県政に反映させる」と定めており、「質問制限はこの趣旨とも違う。議会で最も根源的な原則を逸脱してはならない」。

 県民から選ばれた代表として持つ質問の権利と、共産のミスや不手際によって議会運営が混乱した問題を同列に扱ったことに「議論と感情が交じったことによるボタンの掛け違い」を見る。

 厳しい指摘は共産にも向けられる。共産は議会運営を混乱させたとして、2月に代表質問を自ら辞退している。「自分たちに非があると反省するのはいいのだが、それと住民から選ばれた代表として質問する権利は別物。共産は本来は別々の問題を連動させ、質問制限の流れを自らつくってしまったのではないか」

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 今回の問題を契機に取り組むべきこととして、江藤教授は議員の研修制度を構築することを挙げる。「議員は選挙で選ばれた後も、議会運営の仕方や住民との関わり方、ルールや理念についてしっかりと学ばなくてはならない」

 実際、議会には規則や先例といった細かいルールがある。共産がミスを連発した背景には、6人全員が1期目という苦労も垣間見え、議会内には「共産の会派内に期数を重ねた議員がいたら、結果は違っていたかもしれない」との声もある。「まずは議会としての研修が必要。議会として大事なことを学ぶというのが原則で、これは会派に関係なく求められているものだ。その上で会派としてきちんと教育ができるかどうか、両方が必要だ」

 議会基本条例の施行から8年。江藤教授は「先進的な県議会がなぜ変わってしまったのか、分からない」と首をひねりつつ、今回の一連の問題を議会改革についてさらなる議論をしていく契機にすべきだと指摘する。「条例の見直しや交渉会派要件に満たないより少数会派の質問の機会の保障、運営ルールの見直しなど、県民とともに歩む県議会という視点から議会改革の一環として取り組み、より信頼される議会をつくっていってほしい」


 えとう・としあき 1956年東京都生まれ。中央大大学院法学研究科博士後期課程満期退学。山梨学院大法学部教授。専門は地域政治論、政治過程論。
 えとう・としあき 1956年東京都生まれ。中央大大学院法学研究科博士後期課程満期退学。山梨学院大法学部教授。専門は地域政治論、政治過程論。

<県議会基本条例の主な条文>




■第2条(基本理念)
 県議会は、日本憲法に定める県の唯一の議事機関として、常に県民とともに歩む、地方分権の時代にふさわしい県議会を目指し、積極的に改革に取り組むものとする。

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