在日コリアンに対する差別や殺害までもあおるヘイトスピーチを繰り返している男性が5日、川崎市中原区の中原平和公園周辺で計画していたデモは、出発直後に中止となった。ヘイトデモによる人権侵害を未然に防ごうと千人規模の市民らが声を上げ、体を張って道をふさぎ、県警が状況を伝えたところ男性が自ら中止を決めた。
男性は市内在住の津崎尚道氏で、「日本浄化」を目的としたデモには約40人が参加した。中原署によると、午前11時半から午後0時半までの間、公園を出発して武蔵小杉駅に向かって行進する予定だった。
午前10時半ごろからデモ参加者が集まり始めると、ヘイトスピーチに反対する市民らが抗議の声を上げ、公園に近寄らせなかった。デモ隊はプラカードを掲げて10メートルほど進んだものの、差別に反対する100人近くが車道に座り込み、行く手を阻止。警備に当たっていた県警が「デモを続けるには大変危険な状況にある」と津崎氏に告げたところ、本人が中止を決めた。
津崎氏は、川崎駅前を中心に2013年5月から11回のヘイトデモを主催。昨年11月と今年1月には在日コリアンが多く暮らす川崎区桜本地区を標的にしていた。
津崎氏は当初、5日の集会とデモの集合場所として同区内の公園利用を申請したが、市はヘイトスピーチ解消法の趣旨を踏まえ、不当な差別的言動が行われる可能性が高いと判断。同法成立後の5月30日、ヘイトデモを巡っては全国で初めて市が公園利用を不許可とした。横浜地裁川崎支部も2日、津崎氏に対し桜本地区でのヘイトデモを禁じる仮処分決定を出していた。
津崎氏は1日、中原署に道路使用許可を申請。同法が施行された3日、県公安委員会と県警が男性のデモと道路使用の申請を許可した。同法の施行を受け、警察庁はヘイトデモで違法行為があった場合は厳正に対処するよう全国の警察本部に通達しており、県警の当日の対応が注目されていた。