
下水道管の破損により鎌倉市が下水を海に放流していた問題が、発生から1カ月を経てようやく収束を迎えそうだ。市は27日に仮設の排水管の増設を完了し、4月22日から続けていた海への放流を完全に停止したと発表した。周辺ではイベントが一部中止となるなど影響も生じていただけに、関係者からは安堵(あんど)の声が漏れる。海水浴シーズンを前に、6月上旬に公表される海水浴場開設のための水質調査結果が待たれている。
下水の放水量は、開始時点で1日当たり2万2千立方メートル、市南部の1万7千世帯分に及んだ。市はバキューム車(4トン)で汚水を浄化センターへ運ぶ対応を取ったが、“焼け石に水”状態。住民に節水を呼び掛け、4月末に仮設管2本を設置したものの、排水量の多くなる日中には海への放流を続けざるを得なかった。
海水への影響を計るため市はほぼ毎日、水質調査を実施。基準値を上回る大腸菌群の検出範囲は、当初は放流口付近に限定されていたが、5月半ばに3度、材木座と由比ガ浜の海水浴場を隔てる滑川河口付近で基準を超えた。18日以降の検出値は基準を超えていない。
周辺に影響も出ている。21、22日に由比ケ浜海岸で開かれた鎌倉ビーチフェスタでは、カヌーやサーフィン体験などが「参加者の健康面に配慮」(主催者)して中止となった。
1カ月以上も放流が続いたのは、大型連休前に収束できなかったことも一因だ。市は当初、仮設管2本で全量を送水できると見込んでいた。だが設置場所に高低差があったため送水量を十分に確保できず、業者からも太い管を取り寄せられないまま「連休と海水浴の時期に重なってしまった」(市都市整備部)。
「今後を心配すればきりがないが、ぎりぎり間に合ってほっとした」。本格シーズン入り直前の放流停止に、市海浜組合連合会の増田元秀代表は胸をなで下ろした。鎌倉漁業協同組合は魚の検体検査を実施し、数値に問題はないとしている。
海水浴場の開設は、県が毎年実施する水質調査の結果が一つの目安となる。鎌倉保健福祉事務所によると、鎌倉エリアでは5月中旬に5地点で計4回水質を計測。結果は6月に公表される予定で、平均値が「適」となれば市が開設を判断する。「不適」の場合は調査が継続される。
◆鎌倉の下水流出 4月14日、稲村ガ崎の国道134号の歩道が深さ7メートルにわたって陥没する事故が発生。歩道下に埋設されていた下水道管1本の継ぎ手部分が破損し、漏水した。管の下の地盤も崩落したため、市は修復工事が困難と判断。4月22日から消毒処理した下水を海に放流する緊急措置を取っていた。破損した下水管の本格復旧は、崩落した地盤の調査が必要なため、現時点で見通しは立っていない。