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位置の情報どう活用 連鎖地震~熊本の教訓(3)

社会 | 神奈川新聞 | 2016年5月17日(火) 09:28

活断層上の公園で土地利用の状況を説明する浅見顧問(中央)。住宅は離れた場所にある=8日、横須賀市
活断層上の公園で土地利用の状況を説明する浅見顧問(中央)。住宅は離れた場所にある=8日、横須賀市

 「ここが北武断層の境界です」

 市民団体「三浦半島活断層調査会」の浅見茂雄顧問(63)がスコップを傍らに置き、汗を拭った。足元には、自ら掘った数十センチの穴。周囲からにじみ出た海水が底にたまっている。

 対岸に房総を望む横須賀市の野比海岸。その小さな砂浜に大型連休最終日の8日、地質や防災に関心のある約30人が市内外から足を運んだ。市自然・人文博物館主催の北武断層観察会。「この断層が動けば、熊本のようになるのだろうか」(72歳の男性)。誰もがそんな不安を抱きながら、地表に残る地震の痕跡に目を凝らした。

 波打ち際に掘った穴に手を入れた浅見顧問が掘り出したのは、砂でも小石でもなく、粘土だった。「これが断層粘土。活断層の境界だからこそ、存在しているものです」。粘土は、ずれ動く断層によって岩石や地層が変形し、砕かれるなどしてできたと考えられている。

 北武断層は、三浦半島中南部を横切るようにして多数の活断層が分布する「三浦半島断層群」の一つ。並走するのは北側が「衣笠断層」と「武山断層」。南側には「南下浦断層」や「引橋断層」がある。全体で国内約100の主要活断層帯の一つに位置付けられ、調査や危険性の評価が進められてきた。

 特に、隣り合っている衣笠断層とともにマグニチュード(M)6・7以上の地震を起こす可能性がある北武断層は、明らかになった位置がまちづくりに生かされている点で特筆される。

 観察会の一行は、その現場にも足を向ける。野比海岸から約1キロ。瀟洒(しょうしゃ)な家々が立ち並ぶ高台の住宅地に隣接する「野比東ノ入公園」に着くと、浅見顧問は言った。「私たちはここを断層公園と呼んでいます」

 なぜなら、真下に北武断層が走っているからだ。1995年の阪神大震災後に完成をみた住宅開発で事業者の京浜急行が市の指導を受け、断層の通る位置から宅地を25メートル以上離す措置を講じた。地表に断層が現れても、住まいや宅地が直接的な被害を受けないようにするためだ。さらに内陸の横須賀リサーチパークでも、断層上を道路などにして緩衝地帯を設けている。

 浅見顧問は「活断層を避けた画期的な土地利用」と評価しつつ、課題も挙げた。「こうした取り組みはその後広がっていない。もっと積極的に断層の位置をはっきりさせ、その上に建物を建てないようにすべきなのだが」

 三浦半島活断層調査会は阪神大震災直後の95年夏に産声を上げた。この日の観察会は偶然にも、20年ほど前の最初の見学コースと同じだった。そのときも案内役だった浅見顧問はかみしめる。「今日は皆さんの熱気を感じる」

 熊本地震で身近な活断層に再び関心が向けられるようになった今、新たな会員や住民と見学を重ね、どう向き合うべきか考えていくつもりだ。

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