
【時代の正体取材班=石橋 学】東京ローカルテレビ局、東京メトロポリタンテレビジョン(MXテレビ)の番組が沖縄建設反対運動を巡って虚偽の放送を行った問題で、市民有志による3回目の抗議集会が26日、MXテレビ本社前で行われた。2日の放送から3週間余、この日は沖縄県民も駆けつけ、1日も早い謝罪と訂正を求める声を強めた。そこへ人種差別団体「在日特権を許さない市民の会」のメンバーが現れて―。
娯楽として流されたニュース
マイクを手にスピーチに立った立教大教授の西谷修さんが通りの向こうを見やる。
「今日はとても分かりやすい状況になっている。向こうにマイクでがなり立てている人がいるが、あの人たちと同じ主張をMXはニュースと称して流したわけだ」
約120人が集まった抗議の輪から離れること数十メートル、警備の警察官らに取り囲まれた中年女性がひとり拡声器で声を張り上げていた。

「何がデマだ。真実の報道だ。機動隊を殴る蹴る。好き放題やって。沖縄の住民も迷惑してる。お前らみたいな小汚いのが本土から来やがって、と」
「いつも集団でやる。これがお前らサヨクのやり方だ。MX頑張れ。言論弾圧に負けるな。暴力集団に負けるな」
その様子をウェブ上に上げるためスマホで「自撮り」するマスク姿の中年女性は、人種差別団体「在日特権を許さない市民の会」(在特会)東京支部長の新妻舞美氏。在日コリアンへの差別と排斥を唱える暴力的なヘイトスピーチをデモや街宣で繰り返してきた。「在日特権」という自らつくりだした虚構に憎悪をたぎらせ、笑みさえ浮かべながら人を痛めつける、いつもの倒錯した姿だった。
西谷さんが続ける。
「あのニュースは、ああいう人たちが支持する、ほとんど娯楽として流された。権力に対して体を張って暮らしを守ろうとする人々をばかにし、さげすむ。これは報道機関が最もやってはいけないことだ」
上がったステージ

問題になっているのは、化粧品販売大手のDHCの子会社DHCシアターが制作しているニューストーク番組「ニュース女子」。2日の放送では、沖縄県東村高江で米軍ヘリコプター離着陸帯(ヘリパッド)建設に反対する市民を「テロリスト」に例えたり、「反対派は日当をもらっている」「(沖縄の)大多数の人が米軍基地に反対という声は聞かない」と、虚偽の内容を伝えたりした。
「デマが地上波で流された悪影響はほかと比べものにならない。また一つステージが上がったと感じる」
沖縄出身で流通経済大教授の宮平真弥さんは危機感をあらわにした。