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【連載】帰還を思う(中)南相馬  一時宿泊支える旅館

社会 | 神奈川新聞 | 2016年5月15日(日) 20:06

 「(避難指示区域の解除の)時期はグレー」。2月下旬、福島県南相馬市の避難指示区域の解除に向けた、国の原子力災害現地対策本部と市による説明会が行われた。同市小高区の「双葉屋旅館」の女将(おかみ)小林友子さん(63)は説明会から戻り、こう口を開いた。

 同旅館では1月から、一時宿泊を希望する市外(同県新地町、相馬市を除く)へ避難した住民のみを受け入れている。泊まり込みの帰還準備を支援しているわけだが、夫の岳紀さん(67)は「(4月には)解除しないのではないか」と応じた。


部屋数限定で一時宿泊を希望する市外への避難者の受け入れを今年1月から始めた双葉屋旅館
部屋数限定で一時宿泊を希望する市外への避難者の受け入れを今年1月から始めた双葉屋旅館


 市域の一部は、東京電力福島第1原発事故後、立ち入りが禁止される「警戒区域」や、年間積算線量が20ミリシーベルトに達する恐れのある「計画的避難区域」などに指定された。2012年4月の区域再編で、両区域は年間積算線量が異なる三つの避難指示区域に再編された。

 年間積算線量が最も高く、原則立ち入りが禁止される「帰還困難区域(年間積算線量50ミリシーベルト超)」を除く、二つの避難指示区域について、同本部は当初、今年4月の解除方針を示したが、新たな解除時期の目標を7月1日とし、5月15日から始まる説明会で住民に対して示すという。

 小林さんは「(帰還には)いろいろなことが複合的に関わってくる。帰れるといって、手を挙げて帰ってくる人がどれだけいますか」と原発事故で地元を追われた5年の歳月を振り返る。「(帰還するか、しないか)どちらが正しいとかという問題ではない。そんなに簡単に決められるものじゃないんです」

 避難をしていると家屋の劣化は進み、田畑は荒廃する。別の土地での生活を決めた住民もいる。岳紀さんは「放射線量だけで語られるけど、それは違う。違う生活環境に放り込まれて5年間、慣れ親しんで、帰れるからと言われたって、違和感がある。(帰還については)千差万別。帰りたいと思っても帰れない環境になった人もいる」と話す。



 

避難者の居場所

 
 5年前の3月11日、小林さん夫婦は旅館にいたところを激しい揺れに襲われた。「ギシギシ」と建物がきしむ音が伝わってきた。

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