
「活断層が地元にあったなんて。地震が起きてからニュースで初めて知った」
震度7の激しい揺れに2度も見舞われた熊本県益城町。自宅の基礎が損傷し、避難生活を余儀なくされている主婦吉川リエ子さん(82)は自戒を込めて言う。「こんなに大きな地震が起きるとは思っていなかった。だから備えてもいなかった」
なお収まらぬ余震におびえながら、被災地の人々は身近な「直下型」のリスクに目を向けてこなかったことを悔いている。吉川さんと同じ避難所に身を寄せる主婦小島美枝子さん(66)も、「活断層があるのは知っていたけれど、海は遠いし、周囲に山はないので、津波も土砂崩れも心配していなかった。正直、地震は人ごとだった」。
東京経済大の吉井博明名誉教授は、人々が不意を突かれた背景を読む。