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時代の正体〈305〉国連特別報告者が見た日本(中) 押し返す力が弱体化

社会 | 神奈川新聞 | 2016年5月1日(日) 09:35

「報道や言論の自由について調査する」と語るケイ氏=東京都千代田区
「報道や言論の自由について調査する」と語るケイ氏=東京都千代田区

 日本の「表現の自由」を調査するため、来日した国連特別報告者デービッド・ケイ氏。調査終了後に外国特派員協会(東京都)で行われた記者会見では、国内外のジャーナリストから質問が飛んだ。

 

-(放送局に電波停止を命じる可能性を言及した)高市早苗総務相には会えましたか。面会したジャーナリストらは匿名を条件に話をしたというが、話題は。

 ケイ氏 「来日してすぐに、ジャーナリストから『高市総務相に会ってほしい』と頼まれました。高市総務相に何度も『会いたい』と申し入れたが、国会会期中であることを理由に断られました。結局、会えなかったが、高市総務相が『電波を停止する可能性がある』と言ったということは、他省庁の話から確認できました。

 ジャーナリストからは『リベラルなキャスターやコメンテーターがテレビで政権批判した。その後、理由は分からないが、有名な番組から降板するようになった』と聞きました。キャスターたちが同じタイミングで一気に降板となったことは、非常に異例であると話していました」

萎縮


 

-特定秘密保護法についても改正すべきだと指摘しているが、どの点を変えるべきだと思いますか。

 ケイ氏 「まず『特定秘密』の定義があいまいで範囲も非常に幅広い。そこが問題です。情報公開が大幅に制限され、国民の知る権利が侵害される恐れがあります。特定秘密の定義は規定を設けて範囲を明確にする必要があります。

 もう一つ、大きな懸念があります。特定秘密保護法が報道を萎縮させてしまうのではないか、と心配しています。記者や記者の情報源が罰せられる危険性があります。

 ジャーナリストの皆さんは『報道すると罰せられてしまうのではないか』『記事の書き方によっては罰を受けるではないか』といった不安を感じるのでは。『書くのをやめておこう』といった抑止力も働くのではないかと思います。

 日本では、内部告発者を守ろうとする力が非常に弱いように見えます。良心から内部告発をしたにもかかわらず、罰せられる危険性がまだまだあるのです。

 内部告発者を保護する体制が弱いことは、ジャーナリストにとって情報源の枯渇につながります。それ自体問題ですが、最も深刻な問題は国民の皆さんが、必要な情報を得られなくなることです」

 

-記者クラブ制度自体が政府との密着、またはメディアの自粛の原因になっていると思うが、記者クラブを廃止すべきか。

 ケイ氏 「記者クラブは廃止すべきです。記者クラブ制度は大手メディア、政府にとって都合がいいものです。記者クラブに入っている記者はすぐに質問でき、オフレコの話もあると聞いています。定期的にオフレコの話が行われ、そのメモや議事録は公開されないと聞きました。それは、(権力に近寄り過ぎて、情報をもらう見返りに権力に都合の悪いことは書かない)『アクセス・ジャーナリズム』を推進するような形になってしまっています」

監視



 

-政府とメディアの間には「緊張感があることが健全」と言いましたが、日本における緊張感と、海外での緊張感とでは何が具体的に違うのでしょうか。

 ケイ氏 「当たり前ですが、ジャーナリストの役割は権力の監視です。政府の発表をそのまま新聞に掲載したり、テレビで流したりすることではありません。メディアがすべきことは『政府の言動はこれで本当にいいのだろうか』といった議論を含めて記事にすることです。日本では、それが非常に難しくなっているように見えます。

 政府に対して疑問を示す、議論を起こすことが少なくなっていると思います。政府が記事や報道を見て『これは違う』と言った場合、報道はさらに『いや、違う』と強く言い返す、押し返すことが必要です。日本ではメディアの押し返す力が弱体化しています。

 日本社会、市民にも関係してきます。例えば、熊本地震が起きた直後です。震源地の近くには(川内)原発がある。断層の周りに原発がある。地震で原発はどうなるのか。電力がどうなるのか。市民は関心があります。メディアは市民の不安や要望に応えるだけの情報を的確に報道しているのでしょうか。

 メディアが実態を報道し、疑問を提示し、日本は将来どうすべきかについて市民も一緒に議論していく状態が健全だと思います」

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