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やまゆり園建て替え、再検討 「拙速」批判受け知事 相模原殺傷

社会 | 神奈川新聞 | 2017年1月26日(木) 02:00

46人が殺傷された障害者施設「津久井やまゆり園」=2016年7月撮影
46人が殺傷された障害者施設「津久井やまゆり園」=2016年7月撮影

 46人が殺傷された相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」の建て替え方針をめぐり、黒岩祐治知事は25日の定例会見で「施設は本来どうあるべきかを冷静に考え直すところに来ている。もう一回しっかりと議論し、みなさんが納得できる形で着地点を探していきたい」と述べ、再生構想案を再検討する考えを示した。入所者の意向確認を行う意向も表明し、今年3月の再生基本構想の策定期限を延期する可能性が出てきた。

 県は昨年9月、入所者の家族会と施設を運営するかながわ共同会の要望を踏まえ、現在地で全面的に建て替える方針を打ち出した。だが、今月10日の公聴会では「障害者の暮らしの場を施設から地域へ」という理念や実践してきた経験に基づき、専門家や障害者団体から「時代錯誤」「拙速だ」といった異論が相次いだ。

反対意見に耳を傾ける姿勢も


 会見で知事は、事件から半年間を「早くしないといけないという気持ちで動いた」と振り返る一方、「(公聴会などで)根本的な問題を投げかけられた。(現状の方針と)どう折り合いを付けていくか。それも含めて議論していきたい」と、反対意見に耳を傾ける姿勢を示した。

 同じく公聴会で要望が多かった入所者本人の意向確認は「専門家の意見も聞きながら、伺っていく方向で検討していきたい」と述べ、年度内にも着手する考えを示した。

 ただ、「建て替え方針を見直すか」という質問には「今の段階ではそこまでは言えない」と答え、意見集約の手法についても「検討している」と述べるにとどめた。

 県はこれまで、3月末までに基本構想を策定、来年度当初予算に基本設計費を計上する見通しを示していた。今後は「入所施設のあり方」「県立施設の役割」といった根本的な議論にも踏み込むとみられ、スケジュール通りに進められるかどうかは微妙だ。

「建て替えしかない」家族会会長



 黒岩祐治知事が再生構想を再検討する意向を表明したことについて、津久井やまゆり園の家族会「みどり会」の大月和真会長(67)は「現実として建て替えしかないと思っている」と語り、現行方針を支持する考えを示した。25日、神奈川新聞社の取材に答えた。

 家族会が実施したアンケートでは、約9割の入所者家族が建て替えを希望した。この点を踏まえ、大月会長は「私たちは決意を持って(建て替えを)お願いした。ぜひその方向で進めてほしい」と話した。

 一方で大月会長は、10日の公聴会で大規模施設を再建することへの批判が相次いだことを念頭に、「この間の流れを見ると、知事のそういう発言もやむを得ない」と一定の理解を示し「知事が迷っているとしたら、もう一度(現行方針通りに)見直してもらいたい」と語った。

事件半年 波紋なお



 相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者ら46人が殺傷された事件は、26日で発生から半年となった。元職員の男(27)が引き起こした戦後最悪とされる凶行は、障害者との「共生」を掲げる社会に衝撃を与え、福祉施策のあり方にも波紋を広げた。

 2012年12月に同園で働き始めた同容疑者は、「重複障害者はいない方がいい」などと差別的発言を繰り返し、昨年2月に自主退職。その直前には衆院議長公邸を訪れ、「私は障害者を抹殺することができる」などと施設襲撃を予告する手紙を持参していた。

 容疑者が事件前にしていた措置入院を巡っては、「退院後のフォローが足りない」といった批判が続出。制度や運用のあり方を見直す議論が高まり、厚生労働省の検証・再発防止策検討チームは12月、全患者の入院中から退院後までの支援計画策定を求める報告書をまとめた。

 一方、県の第三者検証委員会は11月、再発防止を目指した最終報告書を黒岩祐治知事に提出。「施設側の対応は非常に不適切」と結論付け、園の危機意識の薄さ、県や県警などの関係機関との情報共有不足などを指摘した。

 「障害者は不幸をつくることしかできない」。容疑者の言動から社会に潜む「優生思想」が浮かび上がり、障害がある当事者や支援団体は「障害のある人もない人も、私たちは一人一人が大切な存在です」などと差別や偏見を打ち消す声明を相次いで発表した。

 やまゆり園家族会の大月和真会長は25日、事件から半年の節目に合わせてコメントを発表。悲しい現実を受け止めるにはまだ時間が必要とした上で、こう結んだ。「未曽有の惨事で亡くなった方々のご冥福をお祈り申し上げます。あなたたちのことは決して忘れません」

 ◆相模原障害者施設殺傷事件 2016年7月26日未明、相模原市緑区の障害者施設「津久井やまゆり園」で入所者が次々と刃物で刺され、19人が死亡、職員3人を含む27人が負傷した。県警は殺人や殺人未遂容疑などで元職員の男(27)を逮捕。横浜地検は事件当時の精神状態を調べるため、2月20日まで鑑定留置を実施している。同容疑者は「全員殺すつもりでやった」「自分は救世主」などと供述し、殺害を正当化する考えを繰り返している。県警は犠牲者19人について「遺族のプライバシー保護の必要性が極めて高く、遺族からも強い要望があった」などとして氏名を明らかにしていない。

 
 

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